MasaichiYaguchi

桜ノ雨のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

桜ノ雨(2016年製作の映画)
2.0
森晴義(halyosy)さんが発表したボーカロイド楽曲がミリオンヒットし、その曲を元に執筆された小説を映画化した本作では合唱部に所属する若者たちの青春が展開する。
この手の青春物、恋愛物では複雑な家庭環境を抱えたキャラクターが登場したり、恋の鞘当てが繰り広げられたりするが、本作ではこれらの“定石”というか、“定番”のような設定や展開が殆ど無く、リアルで等身大の若者たちが描かれる。
ただヒロインの未来が内向的というか、自分の思っていること、言いたいことを外に出さないので、彼女の友人ではないが、見ていてイライラする。
そして彼女の思い人も、彼女の思いも自分の思いも気付いているのに、「一歩」踏み出そうとしないので、観ているこちらももやもやしてしまう。
更にヒロインに好意を抱いていると思われる後輩男子もいるのだが、彼もどっちつかずで曖昧だ。
今時の若者は恋愛に臆病で、友達以上恋人未満のカップルが多いのかもしれないが、青春を描いた作品としては歯痒さを感じる。
作品全体が曖昧模糊とした感じなのだが、終盤でいきなり“転調”する展開に違和感を覚える。
合唱部に貢献していないと悩むヒロインが土壇場で発議した内容は、“卓袱台返し”のようで有り得ない。
本当に彼女が部の為を思っているのなら、もっと早く動くべきだと思う。
映画的には、あの“どんでん返し”から感動の山場にもっていこうという意図かもしれないが空振りしている。
映画で披露されている合唱そのものは素晴らしいので、何とも盛り上がりが空疎になってしまった展開が残念だ。