このレビューはネタバレを含みます
アリスが生きたウサギの耳をむんずと掴み上げるシーンは笑った笑。これが当時の動物への扱いか…。
1903年版に続いて恐らく二度目のルイス・キャロル原作「不思議の国のアリス」の実写化である。それでも1915年と、わずか10年足らずで映画史始まって再び取り上げられる程には映画のファンタジー性との相性が良いのだろう。
所謂映画的なトリック、メリエス的な技法はあまり用いられていない。その代わり、原作本のジョン・テニエルによる挿絵を元にした造形のキャラクターが沢山登場している。それも全部着ぐるみ。結構気合い入った作りだし、よたよた重そうな着ぐるみで歩く姿は愛嬌あり。ロブスターとかセイウチはかなり良い造形してた。全て人間が演じている感じがお遊戯的なゆるさを醸していて、人の手で作られたんだろうなというのをより意識した。それもみんなウキウキして着ぐるみの中で演じてるのかなみたいな、そういう想像をした。
アリスは他の「不思議の国のアリス」に比べると少女と言うほど小さくはない。膝枕で寝るような年頃に見えないから、返って自身の少女時代にしがみついてるような風に見える。そうなるとよりあの不思議の国は逃避先として開かれてるように思える。
アリス「どこに行けばいいの?」
チェシャ猫「どこに行きたいかによる」
アリス「"どこか"に行きたいの!」
アリスとチェシャ猫のこの問答もどこかモラトリアムな響きに思えないだろうか。
映画冒頭からも、部屋の窓から外の遠景が覗いており、それは窓辺に立つアリスを逃避へと誘引して止まないのだった(穴に落ちるまでのシークエンスはひたすら画面の奥へとアリスは導かれている)。
背景情報は古い故にあまり詳細になかった。監督のW・Wヤングはこの映画以外の経歴無し。主演のヴィオラ・サヴォイは演劇から映画の世界に入るも、どうやら今作の後は2.3本出ただけで経歴無し。Wikiにはその後には亡くなった年齢だけ記されてた(87歳と割と長生き!)。
P.S.
アリスが飼い猫の話をした時の、ネズミさんの拗ね方良すぎ笑。サイレント映画の身振り手振りってなんだかんだで今見てもわかりやすいから、ほぼ100年前なのに身近に感じやすいのかな。