藻尾井逞育

シンクロナイズドモンスターの藻尾井逞育のレビュー・感想・評価

3.5
「自分が嫌いだからなんだ。自分の世界がちっぽけだってことに耐えられないんだね。それだけだったんだ。悲しいね」

憧れのニューヨークで働くグロリアだったが、失業して酒浸りとなり、同棲中のティムに家を追い出される。仕方なく故郷の田舎町へ帰ったそんな時、韓国ソウルに突如巨大怪獣が現れたというニュースで大混乱が起きるが、なぜか怪獣は彼女が普段するようなしぐさをしていた。

「ブラジルの一匹の蝶の羽ばたきがテキサスで竜巻を引き起こす」じゃないけど、失業して酒浸りでダメダメな女性のちっぽけな日常が、世界のどこかとリンクしている⁈個人や企業、団体が合理的な選択をして活動していくと、国内の範囲を飛び越えて国際的に広がっていくグローバル社会。戦争や飢餓、貧困、環境問題といった国際的な問題が個人の生活をも左右してしまう。同時に個人レベルの問題が、人類共通の価値観として地球全体にまで及んでしまうグローバル社会。この映画はそんなグローバル社会のメタファーなのかもしれません。自分と世界との繋がりに気づけた彼女と、単に自分への承認欲求のみを追い求めた彼。自分と世界が密接にリンクした社会では、自分の小さな行動が世界を救うこともあるんですね。
世界の運命を決めかねない戦いの二つのステージが、かたや韓国ソウルの大都会なのに対し、もう一方は自宅の裏のショボい公園といった町内会レベルにまで落とし込んでいるところがユニークですね。