「仁義なき戦い」シリーズ第4作。
昭和38年に入っても、二大広域暴力団である明石組と神和会の代理戦争は西日本を巻き込み、激化を極めていた。
東京オリンピックを翌年に控え、一般市民を巻き込む抗争についに警察権力が介入。
「頂上作戦」の名のもと、本腰を入れた暴力団撲滅運動に乗り出す…。
警察の頂上作戦により、劇中、早々に別件逮捕される菅原文太扮する広能。
明石組は広島での先鋒を失い、指揮系統が混乱する。
その後の本作の主役は、小林旭扮する神和会側の山守組若頭、武田となる。
「広島ヤクザはイモかもしれんが、旅の風下に立ったことはいっぺんもないんで」
と神戸明石組へのタンカ一発で抗争が激化するシーンはカッコ良くて惚れ惚れする。
しかし「枯れ木に山が食い潰されるわい」と神和会援軍の請求書の束に悶絶したり、襲撃からの逃走でエンストしたクルマを必死に押したりするシーンもあり、いかにもインテリヤクザ風でありながら、常にカッコいいわけではないのが非常に人間味がある。
広能が山守を失脚させ、武田がトップになり広能と手打ちをすることで戦争を終結させようというのが、広能の策であり、武田も腹の内では同意していた。
いわば盟友である広能と武田が、雪の舞い込む刑務所の廊下で短い会話を交わすラストは、映画史に残る名シーン。
「お互い、尺に合わん仕事したのう…」
打本や山守の様な卑怯で小心者の親分がすぐに釈放され、広能や武田の様な仁義を貫き、その度胸で若者たちを牽引してきた男が長期刑を受ける図は非常に辛く、切ない。
「こうして広島抗争事件は、死者17人、負傷者26人、逮捕者役1,500人をだしながら、なんら実りなき終焉を迎え、やくざ集団の暴力は、市民の秩序の中に埋没していったのである。」
最後のナレーションは闘争が終わり、一つの時代の終焉を語る。
前3作とも葬儀のラストシーンだったが、本作のラストは刑務所。
「代理戦争」と前後編で見てほしい。
激しい抗争は指揮官を失い、決着する。
そして、本作が笠原和夫の脚本の最終作。
本来ならば「完結編」にふさわしい。
ヤクザ社会だけでなく、争いごとの果てにある虚しさをも最後に訴える秀作。