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ファニー・ガールの一人旅のレビュー・感想・評価

ファニー・ガール(1968年製作の映画)
5.0
ウィリアム・ワイラー監督作。

実在するアメリカの舞台女優:ファニー・ブライス(1891-1951)の半生を題材とした1964年初演の同名ブロードウェイミュージカルを映画界の巨匠:ウィリアム・ワイラーがキャリアの晩年に映画化したもので、舞台版で主演を務めた新星:バーブラ・ストライサンドは本作でもヒロインを演じ、映画デビュー作にしてアカデミー主演女優賞を受賞しています。

スターを夢見る下町の踊り子:ファニー(バーブラ・ストライサンド)が、ジーグフェルド率いる一流劇団にスカウトされ、喜劇専門の舞台女優として一躍スターダムを駆け上がっていく様子を、賭博で生計を立てている紳士的な賭博師:ニック(オマー・シャリフ)との邂逅と恋愛の行方を軸に描き出したミュージカルドラマの名篇となっています。

『スタア誕生』のように、華やかな世界で成功を収めていくファニーの姿とは対照的に、恋人のニックは新規事業に失敗して次第に落ちぶれていくという男女の逆転劇&すれ違いの様相が悲哀的に描き出される作品で、ショービジネスの世界に生きる女と浮世離れした男の哀感溢れるロマンスが絢爛豪華な映像美に乗せて語られていきます。

そして、映画初出演にしてアカデミー主演女優賞を勝ち取ったバーブラ・ストライサンドの名演が独壇場の輝きを放っていて、劇中挿入される多彩なミュージカルシークエンスにおいて堂々たる歌声を披露しています。また、歌の上手さのみならず感情を込めた台詞回しや表情の作り方も映画デビューには見えない完成度で、本作によって映画界のトップに躍進した彼女は、スターダムを駆け上がっていく劇中のヒロインの姿と重なります。
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