このレビューはネタバレを含みます
【前書き】
松本人志の映画作品を観る。
2作目の今回は2009年公開の『しんぼる』。
公開当時は話題になってた作品だし、賛否両論あったのも聞いたことがある。
でもワシは今回が初見で、細かい内容についてよく知らない。
【あらすじ】
謎の白い部屋に閉じ込められた男が、その場所から脱出を試みる一方で、メキシコの覆面プロレスラーは試合に向かっていく。
一見すると何の関わりも無さそうな2つの物語は、意外な形で交わり、やがて混沌とした様相を見せ始める…。
【雑感】
作品はメキシコのレスラーの話と、白い部屋に閉じ込められた男の話という、2つのエピソードから成る。
前者は後の展開のための前フリの役目しかないため、本作で重要なのは後者の白い部屋のエピソードになる。
ところがそのエピソードはワンシチュエーションの一人芝居で、ほぼセリフは無く、演技で何かを表現してる風でもない。
むしろ演技というより、壁の仕掛けに対するリアクション芸や、物ボケ風なことを延々やってる感じだ。
残念なことに、それらリアクション芸的な演技は、いわゆる“ツカミ”でスベってしまってる。
そしてその空気を変える術も無いまま、すっと同じテンションで、いつかどこかで見たようなボケが、ずっと続けられていく。
その間、物語にはろくな進展が無いので、じれったくなってイライラしてくる。
こんな内容から、この先どう挽回するのか?と思ったけど、それは至難の業だったみたい。
後に訪れる意外な展開も、壮大な結末からも、一度火がついた苛立ちが鎮まるほどのインパクトは感じられなかった。
それよりも、最後まで“オレ流”な映像表現や物語に、呆れたような気分にさせられた。
賛否両論ある知ってたので、多少の覚悟はしていたつもりだったが、予想以上に酷いものだったね…汗
率直な感想としては、面白いと感じるところはほぼ無かったし、一体何がやりたかったんだろ?と思った。
とりあえず今回はそんな感じでした。
【後書き】
これはどういう物語だったんだろう?
いろいろ考えながら、想像と仮説と勝手な解釈で書いてみる。
ウィキペディアには本作について、当初から海外を意識して制作された作品とある。
そうか、海外を意識してるから、作中にセリフが無いんだな。
じゃあセリフを使わず、何を表現しようとしてたんだろうか?
紆余曲折を経て、男の風貌がキリスト風になっていくので、宗教的なものや世界の成り立ち的なことを描きたかったのかな?
いや、それっぽい表現はあるものの、そう解釈するにしては納得いかない部分が多すぎる。
そこでちょっと視点を変えて、作中のエピソードが修行、実践、未来と3つに分けられてる点を考えてみた。
なぜそのようなサブタイトルで分けられてるのか?
そして、そもそも誰が何のために修行してるんだろうか?
なんとなくだけど、白い部屋に閉じ込められた男が、何者かになるため修行させられてる感じがしなくもない。
しかし、その後行われる実践があまりにもくだらないし、そもそもこの作品は男の成長物語って感じがしないんだよなぁ。
どうも納得出来ないまま、あれこれ考えていたら、ふと思いついたことがある。
本作の監督・主演の松本人志は、当時は既にお笑いのカリスマと呼ばれ、日本のお笑い芸人のトップに君臨していた。
その松本人志が国内のみならず、海外に打って出るために作った映画が本作な訳だ。
この作品で海外の観客にウケたい気持ちや、ドカン!と笑わせてやろうという意気込みは、恐らく非常に強かったんじゃないだろうか。
そんな推測から、本作は海外志向の強い作品だけに、海外の観客を笑わせることが最大の狙いだったんじゃないのか?と仮説を立ててみた。
それをふまえて考えると、修行している…いや修行させられてるのは、実は観客だったのではないかと思えてくる。
どういうことかというと、作中の男…つまり日本のお笑い界の第一人者である松本人志が、海外の観客に自らのネタを見せて、日本の笑いがどういうものなのか知らしめてる訳だ。
その過程が、海外の人々にとって、日本の笑いを面白く思えるようになるための修行だ、ということだったんじゃないだろうか。
次に実践は、修行で理解した日本の笑いを、海外のシチュエーションで実践してみた、ということ。
その後の展開については、日本の笑いが海外に広がって繰り返し実践される様子が、男が神格化される過程にオーバーラップする形で表現されてた、と解釈してみる。
そして最後の未来のパートは、日本の笑いが世界のスタンダードになってる表現だったんじゃないのか?
言ってみれば笑いの世界統一が行われ、日本の笑いのカリスマ・松本人志は、世界の笑いの神になる。
そういう話だったと思えるような…ぜんぜん的外れなような…汗
知らんけど。
★余談
この作品について「シュール」という表現が、やたらと使われてる気がする。
ワシが思うに、これは「シュール」じゃなくて「ナンセンス」なんじゃねーの?
どっちにしろ、つまんないのは変わらんけど…汗