このレビューはネタバレを含みます
仕事で「自分」に正直にいること
実在する女性建築家と彼女が手がけたリフォームプランをベースにした映画だそうだが、どこまでが本当かは分からないので、とりあえず「実話から着想を得たフィクション」と解釈します。
男社会で強かに生きる女性像を描いたドタバタコメディ映画です。
この手の映画は普段あまり観ませんが、まぁ笑える映画です。そして映画の掲げるテーマはとても分かりやすく、てんやわんやの果てにハッピーエンドで幕を下ろします。
主人公セレーナ・ブルーノは、天才建築家として海外で数々の実績を重ねながらも、自分の居場所に疑問を覚え、故郷のイタリアで再スタートを切ったは良いものの、まともな仕事にありつけず、バイト先で一目惚れしたイケメンは実はゲイであえなく失恋。
公営住宅のリフォームコンペに応募したが、今度は面接官の勘違いで「ブルーノ・セレーナ」なる存在しない男性建築家の助手という肩書きで合格。有名建築家の事務所で働くことになるのだが……。
セレーナはゲイのフランチェスコに架空の建築家ブルーノを演じるよう頼むが、素人が演じられるわけもなく、影でこそこそ支えるが、それに気付いちゃう社員がいたわけで。
なんやかんやで映画がラストまで進むと、
無能な男を影で支え、良いところは全て持っていかれる女性秘書。
妊娠したら解雇という風潮もあるが故、妊娠を隠して働く女性社員。
まったく応援してないスポーツクラブだけど社長の贔屓のクラブだからと同調するフリをする男性社員。
ハゲを秘匿する男性社員。
そもそも本当の性別すら秘匿するゲイ社員。
出てくるわ出てくるわ。事務所には様々な事情を抱えた社員たちが、体裁だけご立派のバカな男性の下で働いていたのでした。
テンポは良く笑える要素も多いのですが、全体的にごちゃごちゃした感じは否めません。あんまりテーマを絞りすぎても押し付けがましい内容になるだけなので、映画としてはアリなのですが、やはり薄い印象はします。
序盤で主人公が帰郷を選択する動機も弱く、少し映画に入りにくかったです。
イタリアのジェンダー格差の詳細についてはよく分かりませんが、そんなイタリアよりもジェンダーギャップ指数が低い日本が偉そうにどうこう言えるものではないことは確かなわけで、単に「考えさせられた」というよりは映画という虚構を前にして笑いの後に少しばかり虚しさを感じる次第でした。
2021年113本目