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アニンガのatsukiのレビュー・感想・評価

アニンガ(2013年製作の映画)
3.4
【ハイジ=アンニガ】

キュアロンファミリー産『ゼログラビティ』の短編スピンオフ。

本編中にライアンが地球と交信したシーンの相手がのお話。いわゆる『ゼログラビティ』はライアンが『アルプスの少女ハイジ』のクララが立ったあの名シーンを宇宙でやってるものだと思っている。

この短編を観るまでは、同じく宇宙に居たマットがハイジかと思っていましたが、交信相手のアンニガこそがハイジなのだと気付きました。おそらくマットはアルムおんじでしょう。

クララはハイジに罵倒されて、肉体的な問題ではなく、精神的な問題で立つ事が出来なかったと気付く。『ゼログラビティ』でのライアンも最初は「もう帰れない」「もう死ぬしかない」「出来ない」と決め付けていた。でもそれは過酷な状況にせよ、まだ生き残れる希望は残っている訳です。

ライアンとアンニガは言葉の通じない交信で、お互いに生命を感じる。

地球では赤ちゃんと犬で表現される、誕生した新たな命と死が間近な命。一方、宇宙では同じくライアンが「生」と「死」の選択を迫られている。

遥か彼方、どこの誰かも分からず、言葉も通じない。けれども極限状態に置かれた2人の間には生命の息吹を感じた。

この交信を通して、起こしたライアンの選択は『ゼログラビティ』で、アンニガの選択は今作で見届ける事ができる。

この短編単体で特別な面白さはないが、『ゼログラビティ』と重ねる事で素晴らしいものに昇華されている。
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