Kuuta

インクレディブル・ファミリーのKuutaのレビュー・感想・評価

3.8
あーだこーだ書きますが、基本すごく良く出来たエンタメなのは間違いないです。

ダイナミックな動きができるヘレンをメインにしたことでアクションの幅が前作より広がっている。バイクアクションは最大の見どころ。60年代レトロフューチャーでスパイ映画な絵作りと音楽は相変わらずの安定感。前作エンディング直後からスタートするだけに、アンダーマイナー戦での映像の進歩、情報量に圧倒される。

メディアが先導する女性活躍。ウィンストンのヒーローに対する楽観主義や、大衆が見たい物を見せようとする考えはそれこそ今のディズニーのようで。だからこそ、「犯罪都市は遊園地」という言い方に皮肉を感じる。

「男は外に出て働くもの。ヒーローは偉大」という昔ながらの考えに固執していたボブが、“新しい”算数を子と共に学び直し、絶対的な正しさの不在について、赤ん坊の育て方から学んでいく。

新キャラヴォイドの能力の見せ方最高だったし、相変わらずフロゾンは有能過ぎる。リモコンが前作同様キーアイテムに。ダッシュはボタンを押すタイミングを学び、ヴァイオレットは弟の世話をするようになる。ヴァイオレットは前作よりバリアの使い方が広がり、アクションの見せ場も増えている。相手役にヴォイドを持ってきたのも上手い(やっぱり今作は女性の活躍が目立つ)。レストランの伏線回収でガッツポーズしたくなった。

乗り物止めアクションを3回もやるのはちょっとバランス悪いと思う。家族の連携プレーは前作で描いている分、かなりあっさりめ。

前作もそうだったが、“持たない側”である悪役のロジックがしっかりしているのが素晴らしい。ただ、これも前回同様、悪役側のスーパーヒーロー批判が真っ当なだけに、ラストのまとめ方が性急に感じられてしまうのが残念。結局「市民とヒーローは生き方、信念が違う」ことに尽きるんだろうけれど、「それでも互いに分かり合おうとする」方向に持っていかないのがブラッドバードの作家性か。

難しいのがジャックジャックの扱い。確かに私が見た劇場でも彼の暴れっぷりが一番笑いが起きていたが、イマイチ話に絡み切れていなかった印象。万能ゆえに持て余している感じというか、能力がどんどん出てくるのは面白いが、本筋から浮いた見世物感があった。もっと他の家族を掘り下げて欲しかった。振り返ってみるとアライグマがめっちゃ善戦していて笑える。

結局の所、「有能で特別なヘレンvs有能だが特別でない黒幕が、それぞれ無能な大衆とどう折り合いをつけるのか」、持つ者と持たざる者の交流と摩擦を描きたいのに、マスコット的なジャックジャックや、ボブのイクメン要素を挟もうとした結果、ボブの育児を通した成長が最後の戦いに生きてこない物足りなさや、ラストの兄ウィンストンの扱いの雑さに繋がっているんだと思う。77点。
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