rosechocolat

LION ライオン 25年目のただいまのrosechocolatのレビュー・感想・評価

3.8
サルーは、年間80,000万人にも及ぶインドの孤児たちの中でも、本当に本当に幸運な星の元に生まれたということ。幼いながらも天性の勘で危機を逃れることができたのも、幸運としか言いようがない。彼の幸運の陰に、残りの79,999人の不運があることもこの映画はきちんと語っている。

孤児、人身売買なんてインドの日常であり、人は騙してナンボ、売り飛ばしても罪悪はまるでないのが普通であることをしっかり見なくてはいけない。ボリウッドを見てインドに憧れるのは勝手だが、それは目くらまし、騙くらかしにしか過ぎないので。誰かが甘い言葉をかけて来ても決して信用してはいけないのがインドだ。

幸運の星の元に生まれたサルーだけど、自分のルーツを辿りたくなり、そこから養父母への申し訳なさから来る苦しみに苛まれていく過程もきちんと描けている。義理の兄との確執(この兄のキャスティングが、子役も青年期も含めて絶妙であった)について、出会いの瞬間から果てしない違和感を観客にわからせていたのは上手い。

さらにそこからの幸運も続くので、一歩間違えれば「よかったね」で終わってしまいそうなのだが、それだけでない重みや苦しみに正面から向き合ったことを評価したい。

そういえば、デヴ・パテルくんって旅する映画多目じゃん?とか考えつつも、彼自身のアイデンティティはどこにあるのか?と探しているように見えるから、その役が来るのでしょうね。しかもどれもしっかりと答えを見つけている。役に恵まれてると思いますね。
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