タマル

マネー・ショート 華麗なる大逆転のタマルのレビュー・感想・評価

3.2
ベトナム戦争で稼いで、9.11でイラク戦争で稼いで、今度は世界金融危機で稼ぐおつもりですか?
つくづくアメリカ映画は悲惨な事件で金を稼ぐのが好きらしい。
もちろん、こういう映画を観て「これは問題だ……ウムム……」と感想を述べれば、何かしらコミットメントしたような気になってしまう観客がそれだけ多いということかもしれませんが。

本作を観る前に、予備知識として金融系の小難しい本やサブプライムローン問題を扱った記事、ブログ等を漁ってみました。正直、とても辛かったのですが、いざ観てみるとその知識はまるで活かされず。そういった大きな物語ではなく、実被害にあった人たちの現状を知ると、より本作の問題意識を共有できていたと思います。
失業者800万人。
家を失った人600万人ですか。
ブラピの言葉を借りれば、800万もの悲劇がこんな味気ない数字に変わってしまうこと自体、この問題の根幹にある拭いがたいイデオロギーの支配に他ならないのでしょう。この怒りを分け合おうとしたら、それもやはり儲けのタネを利用しなくてはいけないし、それが「現実」ですからね。

今、何かで読んだお話を思い出しています。
金融業を生業とする男が、ある日娘にこう尋ねられます。

「お父さんはなんの仕事をしているの?」

お父さんは、その仕事内容を娘にもわかるよう丁寧に教えました。利発な娘だったので、彼女もなんとか理解できました。
男はてっきり娘に尊敬されるものだと思ったのですが、娘は声をあげて泣き出してしまいました。そんな話でした。
私は、その娘にとって父親が言った内容は娘が思う「仕事」ではなかったのだと思います。この映画を観ていて、特にそう思います。だからどうという訳ではないし、それに対して何か新しい提案ができる訳でもないですが、この映画に感じた不条理、怒り、困惑、無力感は表明し続けていこうと思います。
タマル

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