Inagaquilala

ラスベガス・イリュージョン カジノから2000万ドルを奪う方法のInagaquilalaのレビュー・感想・評価

3.6
オープニングタイトルの前に、主人公が捕えられ金の在り処を尋問されるシーンが流れる。この作品ではクライマックスに近いシーンだが、最初にそれが流されるということは、最後、その後に二転三転の展開があるのだなと思わせる。作品の入りではよくあるやり方だが、すれっからしの観賞者としては、また手垢に塗れた手法をとっているなくらいに思ってしまう。

という、如何にもB級感溢れる導入部の作品だったが、スタッフのクレジットを見て納得した。メインのプロデューサー(製作総指揮)として、あのロジャー・コーマンの名前があったからだ。ロジャー・コーマンは言わずと知れた「低予算映画の王者」と呼ばれ、これまで300近い作品をプロデュースしており、またの名を「B級映画の帝王」とも呼ばれている。昨年、「ロッキー」撮影直前にシルベスター・スタローンが出演していたことでも有名なカルト的B級作品「デス・レース2000年」(1975年)がリバイバル公開されたのは耳新しいが、2012年のこの作品でも健在だった。

日本では劇場公開はされずに、DVDスルーとなったが、さすがにロジャー・コーマンの名前を冠した作品らしく、明らかに内容は「オーシャンズ」あたりを狙っている。あちらは実在のラスベガスのカジノ「ベラージオ」などでゴージャスにロケをしているが、こちらは同じベガスの「オリンポス」という架空のカジノが舞台。「オーシャンズ」とやや異なるのは、現金を奪う人間たちがプロフェッショナルの泥棒ではないという点だ。

「オリンポス」は実は破綻寸前のカジノで、オーナーは従業員たちの年金や社会保険の資金を取り崩して、一発逆転の経営立て直しを図ろうとする。元プロ野球選手で、自殺的なホームスチールで膝を痛め引退を余儀なくされ、いまはカジノで電球交換の仕事をしている主人公は、いち早くその密謀を知り、「自分たちの金を取り戻す」という御旗を掲げて、2000万ドルを奪う計画をする。職場の仲間と共謀して、計画は成功するかに見えたのだが。

最初に書いた通り、ラストにはちょっとしたどんでん返しが用意されている。「オーシャンズ」シリーズほど、派手な現金奪取作戦ではないが、その方法については結構考えられていて、その方法もなかなか面白い。如何にも素人が考えそうなやり方で、本当にそれで大丈夫なのかと茶々も入れたくなるが、いわゆるB級映画としてはよくできている。最後のどんでん返しも途中でうすうす勘付いてしまったが、それほど悪くない幕切れだ。見渡したところなの知れた俳優は出ていないし、すべてにB級感は漂うが、B級といっても、ロジャー・コーマン印だ、並みのB級ではない。ラスベガスが舞台のものは、欠かさずに観ておこうという主義だが、なかなか楽しめる作品だったことは確かだ。
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