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DUNE/デューン 砂の惑星のInagaquilalaのレビュー・感想・評価

DUNE/デューン 砂の惑星(2020年製作の映画)
4.2
期待していたドゥニ・ビルヌーブ監督版の「砂の惑星」。過去にはアレハンドロ・ホドロフスキー監督によって映画化が企画されたり(上映時間8時間にも及ぶ脚本と絵コンテが執筆された)、1984年にはデビッド・リンチ監督によって初の映画化が実現したり、とにかく映画監督にとっては、このフランク・ハーバートによるSF小説の古典(第1作が発表されたのは1965年)は、とてもチャレンジングな原作だった。リンチ監督のそれは、正直言って良作とはいえないものだった。それは本人も認めているが、このビルヌーブ監督は、そのリンチ作品を遥かに乗り越えた完成度になっている。

ビルヌーブ監督の構想のなかには、いまの現実世界に照らし合わせた考えがあったように思える。「砂の惑星」はすなわち中東であり、その獲得をめぐって闘いが繰り広げられる「スパイス」は石油と置き換えられるかもしれない。そう言えばビルヌーブ監督の傑作「灼熱の魂」では中東が舞台として登場する。人物たちが着衣する衣装もどことなく中東世界を意識するものであるし、「スター・ウォーズ」との類似性が認められる原作を、極めて今日的なテーマに置き換えようとしているように思える。残念ながら、作品は「これから」というところで終わっているのだが、どうやらビルヌーブ監督版の「砂の惑星」の正念場からもしれない。

いまこの作品がつくられる意味がもうひとつ。圧倒的に進化した映像技術を駆使することで、ビルヌーブ監督は宇宙が舞台であるにもかかわらず、不思議なリアリティを演出している。リンチ監督もいまつくれば、まったく異なる作品を仕上げたかもしれない。いずれにしろ、物語づくりには優れているビルヌーブ監督によって、登場人物たちに魂が吹き込まれ、この作品を成功へと導いているに思う。宇宙を舞台にした、単なるアトラクション映画にしないところが、ビルヌーブ監督の真骨頂だ。
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