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キル・ビル Vol.1のbluetokyoのレビュー・感想・評価

キル・ビル Vol.1(2003年製作の映画)
4.0
傑作である。傑作には意図した傑作と意図せざる傑作というのがあるように思う。キル・ビル1に関しては後者の割合が高いのかもしれない。監督の特徴かどうかわからないがかなり複雑で目まぐるしいカット割りはそれなりに気を引く。ただテーマが曖昧だと無駄なシーンを量産してしまう。実はキル・ビルにもそれがいえる。それを補っているのがアクションシーンである。ただこちらも退屈なチャンバラに堕する危険もある。これらマイナスをすべて覆ってしまったのが、オーレン・イシイの「やっちまいな!」の一言。これってなにかというと、キル・ビルの元ネタになった「修羅雪姫」あるいは「女囚さそりシリーズ」のテーマなのだ。考えられないくらいの不合理に圧し潰された者たちの叫びなのである。では、オーレン・イシイの苦しみとは何か。それがアニメシーンで描写されている。また、大立ち回りアクションはオーレン・イシイが関わっているのだ。いわば、キル・ビルの影の主人公はオーレン・イシイなわけである。建物の襖をあけ放つと庭に出るがなぜか雪景色。これもオーレン・イシイの悲しい心象風景なのだ。そして、着物姿での戦いはまるで人生の最後を予兆させる。予期せぬ傑作と思ったのは、本来、脇役であるオーレン・イシイがあまりに際立っていたからである。
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