MasaichiYaguchi

ボクは坊さん。のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ボクは坊さん。(2015年製作の映画)
3.9
恵比寿文化祭2015で本作の公開記念特別イベントの上映会で鑑賞。
現役のお坊さんたちによる読経や、真壁監督と出演者の駒木根陽介さんによるトークショーも開催されて、より作品世界に触れることが出来たが、お坊さんにしろ、お寺にしろ、奈良や京都への修学旅行とか、お葬式以外には縁の無い世界。
この知っているようで知らない“坊さんワールド”を、24歳で四国八十八ヶ所霊場、第57番札所・栄福寺の住職になった主人公を通して、時にコミカルに、時に感動的に描いていく。
映画の舞台が弘法大師の所縁の地で、高野山大学で学んだ白方光円が主人公なので、空海の言葉が幾つも出てきて印象的。
「近くして見難きは、我が心なり」
「起こるを生と名づけ、帰るを死とよぶ」
そして見えなくなっても無くなった訳ではなく、目の前にあるものも永遠ではないという「空」の教え。
寺で生まれ育ち、高野山大学で学んでも、住職になって初めて知る“坊さんワールド”。
住職として試行錯誤する中で葛藤したり苦悩したり、その最中に起きる幼馴染の幸せと不幸に心を千々に乱されながら、大師や檀家の人の言葉に耳を傾け、体ごと仏教の教えに向き合う主人公。
お坊さんというと特殊な職業のように思われるが、恋もすれば、友と絆を深めたり、自分の生きる道を模索したりして、何ら普通の人と変わらない。
お葬式だけではない、人々の人生の節目を見守り、地域の“顔”としてのお坊さんの青春を描く物語には、正しい心に従うことや、生きる上でのヒントが沢山ある。