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ディーパンの闘いのmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

ディーパンの闘い(2015年製作の映画)
3.3
ジャック・オーディアール監督が、モンテスキューの「ペルシア人の手紙」からインスピレーションを得て、スリランカの内戦でフランスに逃れたタミル人の偽装家族を描いたヒューマン・ドラマ。
カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞したが、賛否両論が巻き起こった問題作。
原題:Dheepan(2015)

内戦下のスリランカで反政府勢力"タミル・イーラム解放のトラ"の兵士だったディーパン(アントニーターサン・ジェスターサン)は妻と娘を失い、赤の他人の女性ヤリニ(カレアスワリ・スリニバサン)や孤児になった少女イラヤル(Claudine Vinasithamby)と家族を装い、難民認定を受けフランスに入国する。
3人はパリ郊外にある集合団地の一室を与えられるが、団地の別棟には麻薬密売組織が巣くっていた。
ディーパンは団地の管理人の仕事を得る。いとこが住んでいるイギリスへ渡りたかったヤリニは麻薬ディーラーのブラヒム(ヴァンサン・ロティエ)から家政婦として雇われる。
やがて、麻薬組織間の対立による銃撃が起こり、ディーパンたちは抗争に巻き込まる…。

"白線(発砲禁止区域)"

「タミール・イラームのために戦い続けよう。泣いている子たちは"解放の虎"の未来の戦士」

主人公のアントニーターサン・ジェスターサンは実際に"タミル・タイガー"の少年兵を経験。タイに逃亡後にフランスに亡命したとのこと。

1948年のイギリス連邦内の自治領として独立したセイロン(後のスリランカ)は、多数を占めるシンハラ(仏教徒)が少数派のタミル人を排除。やがて、対立が激化。
1975年設立されたタミール・イラーム解放のトラ(LTTE)は、タミル人国家イーラム樹立の要求を掲げて、分離独立運動を開始。
やがて、1983年に内戦が始まり
泥沼化して26年間も続き、2009年にシンハラが多数を占めるスリランカ政府が"タミル・イーラム解放のトラ (LTTE) "の支配地域を制圧して内戦は終結。
帝国主義の時代を経て、イギリス、フランスなど西欧諸国から独立した国々の多くが、独立後民族(宗教)対立により悲惨な状況に陥っている(日本が統治した南北朝鮮も同じ)。
この作品では、タミール人は政府軍に弾圧された対象としてしか描かれていないが、LTTEは「バンダラナイケ国際空港襲撃事件」など過激なテロ行為を展開。その手段は正当化されないだろう。
この作品も、ディーパンが人をを殺して全くお咎めがないのが気になる。
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