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エマニュエル・ベアール 赤と黒の誘惑の4423のレビュー・感想・評価

3.5
タイトルやジャケット、SMという題材から想像するような卑猥な作品ではなく意外と全うな作品である。

ガレージで首を吊って死んだ父。発見した息子は母親との関係が上手くいかず、家庭崩壊の危機に陥っている。多感な時期ゆえに最近引っ越してきた謎の女性にすがるように近付くが、彼女もまた日々の苦痛に身を投じていた。

父を失った少年と息子を失った母親。そんな二人がSMという主従関係を築きあげていく。赤は身を切るような苦痛の日々で、黒は流した血さえ見えなくなるような深いとばりの中の世界だ。

日々の苦痛から逃れるために新たな痛みを投じる彼らの愚かさとちっぽけな世界を私はきっと笑えない。痛みを投与し、甘んじて受け入れることこそが
つらい現実からの逃避だと分かっているから。

『天使とデート』では本物の天使にしか見えなかったエマニュエル・ベアールもさすがに年をとったな~と感じざるを得ないが、スタイルの良さは健在である。SMコスチュームもよく似合っていた。少年を演じたハリソン・ギルバートソンの世界に絶望したかのようなアンニュイさもいい。

「電話するけど出ないで」
「電話してと言ってもしないで」
「道ですれ違っても無視して」
「あなたには愛してると言わない」

この決別の台詞が切なくて、悲しくて、妙にまとわりついて頭から離れない。
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