クリーム

サウルの息子のクリームのレビュー・感想・評価

サウルの息子(2015年製作の映画)
4.0
ナチス政権下、強制収容所で働くゾンダーコマンドのサウルの視点で描かれ、心を殺し無表情で、過酷な作業をこなす姿が痛ましい。こんな恐ろしい作業を強いられていたなんて、知りませんでした。
※ゾンダーコマンドとは、ナチスにより選別され、同胞達をガス室に送り、死体処理を請け負う代わりに、他の人より少しだけ、生き長らえるが、数ヶ月後には彼等もまた殺される。背中に赤い✕の印を背負う。イヤな仕事です。

ある日、サウルは死体の山から息の残る少年を見つけますが、医師に殺され、遺体は解剖、焼却処分を待つ状態でした。サウルは、それは息子だと言い、葬儀をしてやりたいと医師に懇願し、死体を持ち出し、ユダヤ教のラビを探し始めるのでした。



ネタバレ↓



サウルは敬虔なユダヤ教で、正しい事をすれば死んだ後に復活すると信じています。その為、息子を復活させる為に、遺体を火葬ではなく埋葬したかった。そして、ラビを探していた。そんな中、仲間のゾンダーコマンド達は、反乱を起こそうと考え、アウシュヴィッツで行われていた事等を写真に残していました。
そして、仲間達は、ナチスを襲撃する為、焼却炉を爆発させ、混乱している間に、サウル達は息子の遺体を持って逃げ出します。結局、逃げる途中で、遺体は川に流れてしまいます。
他の仲間達に助けられ、サウルは小屋で一休みします。 そこに少年が現れ、サウルを見つめます。サウルは、その時初めて、笑みを見せます。少年は、何とか逃げましたが、小屋にいたサウル達は見つかり、みんな銃殺されるのでした。

サウルの視点で映像が流れていくので、医師、同胞、ドイツ軍、少年、全ての物事の見え方が非常にリアルでした。サウルは、あまり物事を見たく無かったから、全てピンぼけしています。が、だからこそ、悲惨な状況を想像してしまうので、イヤな臨場感がありました。全てをクリアに観たら正気を保てないのだと思います。

あの少年は、恐らく息子ではないと思う。サウルは、望まずとも恐ろしい仕事をしている自分を許せ無かったのではないかと思います。最後に自分に出来る善い行いをしたかったのだと…。
また、ラストの少年は、息子に見えたのか?川に流れた少年に見えたのか?いずれにしても、無事な姿が嬉しかったのだろう。だから微笑んだのかな?
非常に重い作品。ホロコーストを扱った作品の中でも残酷さが際立つ映画でした。同胞が同胞を殺す事に加担し、処分をするなんて、ゾッとします。恐ろしい話でした。
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