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サウルの息子のFrengersのネタバレレビュー・内容・結末

サウルの息子(2015年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

 本作の大きな特徴は二つ。一つは、冒頭のピントのずれた背景からルーリグ・ゲーザ演じる主人公のサウルに焦点が合って以降、長回しで彼を画面に大きく据えるカットが多いこと。もう一つは音楽が一切ないこと。 
 それゆえ、緊張感・圧迫感を生むシーンがほぼ全編を覆い、画面の端に追いやられた、ぼやけた絵、台詞、音によって状況が語られることになる。
 彼の意識そのものを追いかけた様なカットは、○千人、○万人という言葉で片付けられてしまう一人の男を描く為にあるように思える。この映画では、アウシュヴィッツやナチスに直接触れず、主人公の個人的な視点を介して、極端な時代を浮き彫りにするtおいう語り方が選ばれている。
 そして物語の最後、「息子」を抱えたまま同僚と共に監獄を脱走するものの、念願の埋葬もままならず、逃げ込んだ小屋の入り口に少年が現れる。微笑んだ主人公を待つのは銃声だった。
 あくまで一人の人間に寄り添いながら綴られた印象深いレクイエム映画だった。
 ネメシュ・ラースロー監督にはこれからも映画を作り続けて欲しいと思う。
 
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