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ロブスターのひのレビュー・感想・評価

ロブスター(2015年製作の映画)
4.0
「女王陛下のお気に入り」のときも思いましたが、やっぱりヨルゴス・ランティモス好き…めちゃくちゃ良い……観たかった「ロブスター」がネトフリにきていたので早速視聴しました。


合理性と生産性を優先した世界。独身の者は「施設(ホテル)」へと送られ、45日以内にパートナーを見つけなければ「動物」へと変えられてしまう。妻に先立たれた者、離婚した者、誰からも愛されたことがない者。様々な人間が「動物」に変えられることを恐れ、残り少ない日々を送る「施設」へと、妻に捨てられた主人公は収容されるのだが──


ホテル内の規則はどこまでも合理的で、倫理観を欠いており、しかしこの偽りの自由に置かれた世界を否定しきれない。なんと表現すればいいのやら。「シュールレアリスム」でしょうか。
合理性と生産性を追求しているにも関わらず、そこに感情が介入することなど、滑稽の極み。そんな無駄なものは要らないはずなのに、曖昧で魅惑的な共感覚に縋って、彼らはどこまでも堕ちてゆく。それを人は──パートナーを得るために必要な──愛と呼ぶのではないか、と。

彼のこの厭世的な作風、何かへの復讐に思えてなりません。世紀の皮肉屋、稀代の天才。ギリシャという、とても美しく、そしてどん詰まりの国に生まれた彼は、一体何を見、何を感じてこの芸術を産み出すに至ったのでしょう。
画の美しさもですが、音楽の使い方・止め方にもランティモスらしさが出ていて最高でした。はー好き。

「女王陛下のお気に入り」でおなじみオリビア・コールマンはもちろん、レイチェル・ワイズも出ていて、彼女らの芯の強い演技がこの作品でも見ることができます。
コリン・ファレルの物寂しい演技はもちろんのこと、「パディントン」「メリーポピンズリターンズ」のベン・ウィショーがこんな演技もできるなんて!と驚かされました。
あの女性がランティモスの奥様なんですね…嫁になんて役させんねんと笑ってしまいました。彼のこの「笑えるけど全然笑えない」作品、本当にたまりません。

みんなレビューに何になりたいか描いてる!私は猫か文鳥がいいです。
ひ