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バットキッド・ビギンズのdm10foreverのレビュー・感想・評価

バットキッド・ビギンズ(2015年製作の映画)
4.3
【夢】

アメリカのトゥールレイクに住むマイルズ少年はバットマンになるのが夢だった。
たまに別なヒーローに「浮気」をしても必ず戻ってくる。
それはどこにでもいそうな5歳の少年の小さな憧れ。

でも彼は白血病に侵されていた。
今すぐどうのこうのという状況ではない。
でも子供の頃の「一番楽しい時期」の大半を彼は辛い闘病生活で過ごしている。
普通の元気な子供にとってはありふれた一日が彼にとってはとても大切な一日。
両親は彼がやりたいことを沢山やらせてあげたいと願った。
そして一つの団体の存在を知る。

「MAKE A WISH」

3歳から18歳までの難病と闘う子供たちの夢を叶えるために設立されたボランティア団体。
そして両親はこのプログラムに登録する。
(まぁ軽くコスプレでもして、街中でみんなの注目を浴びるくらいかな・・・)
初めはそれくらいにしか思っていなかった。

しかし、マイルズ君の願いを叶えてあげたいと動き出したプロジェクトは当人たちの想像を遥かに超えたスピードで人々の心を動かし、最後にはとてつもないスケールのプロジェクトへと変貌していく・・・。

――これは「表向き」は、マイルズ君とその家族に起きた奇跡の一日を追ったドキュメント。
しかし、その裏では何百、何千という名もなき人々たちの小さな善意が大きな奇跡を生んだという「物語」

とにかく、スケールが半端ない!
「アメリカだから」という一言では片付けられないくらいに、とにかくスピードも規模も桁違い。
で、根本的に「考えている暇があったら行動する」っていうのって、日本人って苦手ですよね。「もうちょっと考えてから行動しようよ・・・あ~ほら言わんこっちゃない」って。
でも、そういうアメリカンな発想って別に「思慮深くない」とか「無計画」ということなんてなくて、動き出したからには絶対成功させるんだ!という不退転の決意表明にも似たものを感じました。
勿論、やってる最中は綱渡りの連続。それは資金だけではなく、車、人、衣装、場所・・・。
でも彼らは「信念」と「熱意」と「賛同してくれる人々の力」で一つ一つ問題をクリアしていく。
地元の小さな町ではなく大きな都会でやりたいという願いを叶える為、サンフランシスコ市や市警察も全面協力を快諾してくれたことで大掛りなことも出来るようになり、まさにゴッサムシティが生まれた。
更にはSNSによって拡散した感動は全世界を駆け巡り、当初は2~300人程度のエキストラを集めるつもりが、気がつけば1万人以上の応募にサーバーはパンク寸前。
ついにはアップルやツィッターなどの大手企業からの協力の申し出があり、ボランティアスタッフでは限界があった部分(トラブル処理のスキルやリアルタイムでSNSに情報をあげる媒体)がどんどんリアルになっていき、あっという間に「ちょっとしたフェス状態」まで膨れ上っていく。
しかし誰もが成功を信じて疑わない。それが全てだから。

きっとね、中にはいたと思うんだ。
「たかがガキ一人の為に道路を何時間も封鎖するって?クレイジーだぜ!」とか
「そんな金あるなら、こっちにも援助してくれよ。うちだって貧乏で不幸だよ」とかとか。

でも、きっとこういうところがアメリカンなんだろうな。
「あなたの幸せが私の幸せですっていう価値観」だけで一瞬にしてもの凄い熱が集まるのって。

やれ「IOCが一方的に決めたことですから」とか
やれ「東京でやらないのであればお金は一円も払うつもりはありません」とか
やれ「あのコースには全く何もないんです。全くです」とかとかとか・・・。

たった一人の少年の為にサンフランシスコという街が丸々一つゴッサムシティに変わったんですよ。たったの1㌦の経済効果もなく、全くのボランティアで。
そして遥かヨーロッパからも駆け付けてくれた人もいたんですよ。何かもらえるわけでもなくただのボランティアとして。

誰かが書いた脚本でもなければCGで過剰な演出がされているわけでもない作品です。
でも何より人の心の優しさが詰まっています。
彼らは「マイルズ君が哀れだから」とか「きっともう長くはないから」と思ってこのプロジェクトに参加したわけではありません。
ここから始まる彼の物語の最初の1ページを共有するために集まった心優しき人々なのです。

BATKID:BEGINS

ここからマイルズ君の未来が始まります。
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