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ヴィオレット ある作家の肖像のTOTのレビュー・感想・評価

3.6
愛してくれない人を愛してしまう、いつも自分のことしか興味がないメンタルを病んだ女性が、叶わぬ愛と性に苦しみながら文学に救われるまで。
40歳手前で執筆を始め精神病院への入院を経て50歳過ぎて作品が認められるまでの苦しい歳月。

ただ、彼女を取り巻く錚々たる人々、モーリス、ボーヴォワール、ジュネ、ゲランが彼女に魅せられるように、彼女と彼女の作品には間違いなくパワーがあるのだ。
そんな彼らに愛を求めながら、いざ愛を得られるかと思うや否や自ら衝動的に破壊し、どうしても孤独になってしまう姿が本当に痛ましい。
また、よく似た母親とは嫌味や文句を言いながら世話を焼き、互いを支え合うが、喧嘩の末に2人がベッドに倒れこんで泣くシーンは親子でありながら幼く見え、抜け出せない共依存関係を印象づけて悲しく。

数々の出会いと別れを経た後の彼女の表情は、何か憑き物が落ちたように爽やか。
幸せとか不幸せとかでなく、こういう生き方もあると思えるラストだった。
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