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この世界の片隅にのyukikaのレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
4.3
呉線から見える瀬戸内海の風景が、海の形、島の形が、本物だって一目見てわかって涙が出た。
そもそも呉の長ノ木で生まれ育ったわたしには懐かしい風景のオンパレードでたまらないものがあったけれど、もちろんそれだけの映画ではなく。

幼い頃から平和教育の盛んな土地であらゆる戦争映画やアニメを観る機会があったけれど、この映画はそのどれとも違ってた。単純に戦争怖い‼︎戦争憎い‼︎ってなんなくて、でもそれが逆にすごく怖い。すずさんたちの生活が丁寧で悲愴感なく普遍的に描かれているからこそ、気づいた時には抜き差しならなくなっていることが、否応もなく戦火と死が訪れるさまが、それさえも普遍的な人の営みの一部として現れ受け入れるしかないことが恐ろしい。
これからもし戦争が起きるなんてことになったなら、間違いなくこうして世界の大きなうねりの中で流され搾取される側の人間に自分もなるのだろうから。けれどそれでもやっぱり、静かに淡々とできることをできるように、食べて眠って笑って怒って恋をして泣いて遊んで、生活していくことしかできないのだろう。
それがこの世界の片隅に生きる者にできる唯一のこと。
だからこれは、すずさんたちの物語であり、わたしたちひとりひとりの物語なのだと思う。

2時間強があっと言う間に過ぎてしまった。
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