骨折り損

この世界の片隅にの骨折り損のレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
4.3
子どもの頃見た火垂るの墓は戦争が怖いという感想がほとんどだったが、大人になってこの作品を見て、あの頃よりも複雑な感情が自分の中に存在していることに改めて気づいた。

こいつは悪モンで、こいつは良いモン、そう世界を見ていた自分がいかに幸せだったか。この映画に悪い人が一人も出てこないことがどれだけ辛いことか。行き場のない我慢たちは人を狂わせる。

日本が戦争に負けた、その知らせを聞いた人々は抑えていた感情を爆発させる。戦争を知らない僕には、戦争に勝ちたかったという感情はいつまでも理解ができないだろう。僕は、戦争が終わった、もう我慢しなくていい、良かったと思ってしまう。しかし実際は敗戦を受けて、何の為の犠牲かと怒り、嘆く。

僕は勝手に共感していた気になっていただけで、この映画は共感して泣く為のものではないのかもしれないと思った。
とても考えさせられ、心に訴えかけてくるシーンがいくつもあり素晴らしい映画であった。
だからこそ、中途半端な伏線をしっかり説明しない点も目立ち、もったいないと感じた。

原作では伏線回収されているので映画ではいっそカットするか、本編の上映時間を伸ばすかどちらかにしてほしい。
個人的にはもっと長くても見たいと思えるので拡張版を心待ちにしている。
骨折り損

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