Garikuson

残穢 住んではいけない部屋のGarikusonのネタバレレビュー・内容・結末

3.0

このレビューはネタバレを含みます

心霊雑誌で実話怪談の執筆を任されている小説家の「私」のもとに、女子大生の久保から手紙が届いた。どうやら久保の住むマンションの和室から、畳の上を箒で何度も掃いているような奇妙な物音がするとのこと。久保が和室の方向を向いている時にその音は鳴らないらしく、果ては恐る恐る和室を覗いてみると帯のようなものが畳を這い回っている姿が見えたという。不審に思った久保は不動産会社に問い合わせてみるも、過去に自殺や不審死が起こった所謂事故物件ではない、とのこと。
実は数年前に私のもとに、同じマンションの別室に住む住人から似たような体験談が寄せられていた。ただしその部屋は久保の部屋とは同じ部屋ではないどころか、縦並びでも横並びでもなく、同じ建物である、という程度しか共通点がない。
興味を持った私は、マンション住民や近隣の住民に聞き込み調査を実施。マンションで特になんらかの事件が起こったわけではないが、どういうわけかいくつかの部屋は入居者がすぐに入れ替わってしまう、との情報を得る。さらに、久保の部屋の前入居者は謎の赤ん坊の鳴き声に悩まされて引っ越したものの、引っ越し直後に自殺していたことが発覚、久保の隣に引っ越してきた夫婦の家も奇妙な火の用心を確認する謎の悪戯電話が多発して僅か数週間で引っ越しを行ってしまう、といった一貫性のない不可解な出来事が次々に明らかになる。
もしやマンションが建つ前に、その地で何かあったのでは?と考えた私は、土地の歴史を調べ始めるが、次から次へと気色の悪い事実が発覚していき。。。

この映画は小野不由美の小説を映画化したものである。原作は未読であるが、「置いておくだけで怖い本」と巷で評価される代物であるというのだから否が応でも期待は高まるというもの。

なによりこの映画の素晴らしいところは、ホラーとミステリーのいいとこ取りで進行していく点であろう。
昨今のJホラーでは異様なほどに主張の激しい怨霊たちが物理・超常に限らずありとあらゆる手段で襲いかかってくる描写が目立つが、この残穢の場合は違う。
過去の事実を遡る際の演出はドキュメンタリーテイストのインタビュー形式が殆どで、怪奇現象の原因となる事実が淡々と第三者の証言で明らかになっていき、最終的には明治の時代まで遡っていくことになる。えらく気の遠い話であるように感じるが、恐怖演出は回想シーン以外一切無く、終始Jホラーらしい気色の悪い雰囲気のまま事実だけがサクサクと分かっていく。これの原因はあれで、あれの原因はそれ、と次々に陰惨な過去が繋がっていく構成は非常に面白かった。

それだけにラストが。。。
ラストの展開だけが個人的には非常に、非常〜〜〜に残念である。
この話の原因となった事象に触れれば呪われ、その話を語っても呪われる。よって、この話を嗅ぎ回っていた主人公連中が祟られる、というのは良い。しかしながら、ここまで徹底的に直接的な表現を避けて雰囲気にこだわり抜いたのであれば、竹内結子に電話がかかってくるシーン、一億歩譲ってワードの文字化けのシーンで終わらせて含みを持たせて欲しかった。
どうしてラスト5分で取ってつけたような幽霊ラッシュをかましてしまったのか。。。
貞子や伽耶子どころか、デスフォレストのヨシエや口裂け女vsメリーさんと比較しても明らかにクオリティの低い真っ黒クロスケのようなモヤモヤCG炭鉱夫の幽霊が急に出張ってきてデスクの下からダイレクトアタックを仕掛けてきた瞬間に、ここまで積み上げてきた残穢のJホラーとしてのアドバンテージが脆くも崩れ去ってしまったように感じた。

「95%の駄作に5%の名作」という私の中のJホラー視聴歴、ついに久々の5%を見ることが出来たと思っていたのに。。。

非常に残念な一本となってしまった。
Garikuson

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