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残穢 住んではいけない部屋のRYのレビュー・感想・評価

3.8
かなり好みだったけど、やはりひたすらに恐ろしい。
いわゆるホラー描写とか吃驚するような恐怖体験が欲しい人には物足りないかもしれないけれど、あとを引きずるような怖さが際立ってる。

主人公である私は、作家であり怪奇雑誌の連載を担当している。その連載は読者たちから寄せられる体験談をもとにした短編連載で、私のもとには数々の体験談が寄せられる。
その一つが久保さんによる一人暮らしのマンションの一室の怪奇体験で、和室から床を箒ではくようなザササ…といった音が聞こえるというもの。
その話に引っ掛かった私は、継続的に久保さんとやり取りを行い、その後の変化を事細かに知るようになる……

という筋書きで、物語は私目線で進んでいくものの、関係者のインタビューだったり、ややドキュメンタリー調のシーンも差し挟まりながら展開していく。
後から知ったけど、登場人物には実在する人物が名前をもじってあてがわれていたり、現実世界との境界の曖昧性が醸し出されている。

内容としては『リング』や『呪怨』のように、亡くなった人間の怨念がもたらす呪いや災いが主軸になっている。ただ、本作はそういった霊的かつ超越的な力によって人々が直接的に死にみまわれるような残酷な描写はほとんどない。(なので目を背けたくなるような瞬間が怖さのわりに少ない)
残穢というタイトルの通り、その土地に残った「穢れ」がじわじわとその人の生活を侵食していく様がゆっくりと描かれるので現実に根差した恐怖がゆっくりと立ち上がってきて見終わる頃には、逃げられない!という気持ちになる。

音楽はホラーの定石通り、不穏なトーンが重ねられるような使われ方だが、曲調が出るぞ出るぞ調ではなく、わりにPOPなメロディーを並べてある。通して観やすかった理由の一つかもしれない。

ドキュメンタリーが好きな人は、細かいところまで染み渡っている残穢が描写されているシーンがあるので、それを勝手に解釈して無駄に怖くなるという体験ができます。(オススメ)
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