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ハッピーアワーのんぎのレビュー・感想・評価

ハッピーアワー(2015年製作の映画)
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こんなに揺さぶられる映画体験もそうそうない。幸福という名の地獄である。思わず目を逸らしたくなるような気まずい瞬間の連続、それが(あろうことか5時間もの長尺で!)イメージの濁流となって観るものの心を毛羽立たせる。一種のファンタジーにも見えるし、実際こんな現実あってはたまらないのだけれど、少なくともカメラが捉える彼や彼女の表情に誇張や虚飾は微塵もなくて、その意味で恐るべき誠実さに満ちている。身体を寄せあってその鼓動を感じたり、離れたところから思いを馳せるだけでも、互いのささやかな生を肯定することができるのだということを描いていた。ここ数ヶ月は『ドライブ・マイ・カー』や『偶然と想像』をはじめとして、濱口作品に触れる機会が多くなっていたこともあって、6年前に初めてみたときよりもしっくりきたような。今後、また何度も観返すことになると思う、自分にとってはとても大事な作品。
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