こたつむり

ペットのこたつむりのレビュー・感想・評価

ペット(2016年製作の映画)
3.8
昔、うちに猫がいました。
元々、野良猫だったのですが、ご飯をあげているうちに居ついたのです。最初のうちは僕の顔を見るたびニャアニャア鳴いていたのですが、いつしか鳴かなくなりました。そのときは「まあ、鳴かなくてもご飯がもらえるからね」と思うだけでした。

そんなある日。
この猫が声を出さずに鳴くのです。口だけ開けて聴こえるか聴こえないかのような声で鳴くのです。「あまりにも鳴かないから、鳴き方を忘れたのではないか」なんて心配していたのですが、最近、それを“サイレントニャー”と呼ぶことを知りました。しかも、猫が信頼している相手…つまり、母猫とかだけに行う最大限の甘えた表現だそうです。

もうね。思わず天を仰ぎましたね。
嬉しさと哀しさが同居した瞬間でした。

と、ここまでは長い前ふり。
さて、息子の強い要望により本作を鑑賞しましたが、子供向け映画としては最適でした。特徴を捉えた分かりやすい動物設定。単純で分かりやすい展開。“ペットを容易く棄てるなよ”というメッセージも仕込みながら「あー、面白かった」で終わることが出来るアニメ。昨今では貴重な立ち位置だと思います。

確かに、無双状態が続くディズニー系(ピクサー含む)と比較してしまうと物足りないかもしれません。あちらは綿密な戦略に基づいて作っているために“大人も楽しめる”部分を確実に押さえてきますからね。でも、子供向け映画で重要なのは想像力を刺激する “隙間”だと思うのですよ。そして、本作にはその“隙間”がきっちりと存在していました。

この“隙間”というのは。
大人の視点で観てしまうと物足りなかったり、矛盾に満ちていたりするのですが、子供のときはそのくらいの方がちょうど良いのです。逆に大人が突っ込むくらいの“隙間”がないと想像力が育たないのです。だから、本作鑑賞後に子供が「うちのペットも何処かで冒険しているのかも?」なんて想像するには、最適だったと思います。

というわけで。
息子も満足していましたし、楽しい映画でした。

ただ、個人的な思いとして。
やはり、一緒に暮らす動物は“家族”なのですね。だから、“ペット”という動物と人間の間に線引きするような呼称が嫌いなのです。そして、僕が線引きをしていなかったから、あの子はサイレントニャーをしてくれたのだろうなあ、って思うのです。でも、もっと早く。そのことを知りたかった。
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