旅するランナー

しあわせへのまわり道の旅するランナーのレビュー・感想・評価

しあわせへのまわり道(2014年製作の映画)
3.8
【ドライブ・仮免カー】

ニューヨーク・マンハッタンのアッパー・ウエストサイドで暮らす書評家ウェンディ(パトリシア・クラークソン)。
タクシー運転手で生計を立てる、クイーンズ地区在住のインド人移民ダルワーン(ベン・キングズレー)。
ウェンディの夫は若い女に走り、ダルワーンはインドから同じシク教徒の妻を娶る。
そんな性別も人種も宗教も異なる男女が、車の運転を通して少しずつ心を通わせていく。

運転技術だけでなく、人生の動かし方を、インド人の言葉から学んでいくのが見どころです。
そして、敬虔なシク教徒が異国で生きていく姿を垣間見れるのも、映画ならではの良さです。
パトリシア・クラークソンが醸し出す上品さにより、全体的に甘ったるく、のんびりと、しあわせ気分を味わえます。

神戸市民映画劇場3月例会上映。

<映画サークル月刊誌より抜粋>
・原作は「The New Yorker」に掲載されたエッセイ。主人公ウェンディを演じるパトリシア・クラークソンが読んで、映画化を熱望した。
・インドでは人口の80%がヒンドゥー教徒であり、シク教徒はわずか2%。日本のプロレス界で1970年代に悪役として活躍したインド人レスラーのタイガー・ジェット・シンもシク教徒のひとりだ。
・この映画で音楽を担当したのは、ビートルズの故ショージ・ハリソン(一時期インド音楽に傾倒)の息子ダーニ・ハリソン。
・インドは世界最大の移民送り出し国。国連の統計によると、2020年時点の移住者は総計約1787万人で、メキシコ系(約1119万人)、ロシア系(約1076万人)、中国系(約1046万人)を大きく引き離している。各国各地にはコミュニティがあり、移民の二世三世を含めると、インド政府によれば、最新の統計で、世界には3210万人のインド系住民がいるという。
・コロンビア大学の2020年の論文によると、米国でのインド系住民は全人口の1%、約300万人と言われる。一般の米国人に比べ、大学学位保有者は3倍、所得水準は2倍となっている。
・現在神戸市に外国人登録しているインド人は938人。そのコミュニティは主に3つの商人グループから形成されている。ヒンドゥー教徒=繊維・電化製品、ジャイナ教徒=真珠(中央区北野に集住)、シク教徒=繊維・自動車部品。
・シク教徒は、インドの北西部パンジャブ地方に興った、ヒンドゥー教とイスラム教を批判的に総合した宗教。開祖ナーナク(1469-1539)が説いた教えは詩歌によって伝えられ、教徒は朗読する。神の前に人は平等であると説く。その思想からカースト制度を否定する。
・シク教徒にとって赤は幸せを表す色だとダルワーンは語る。ウェンディが購入する車の色も赤だ、去っていった夫より自分の新たな幸せを探すスタートの象徴として彼女は赤を選んだのだ。