IT坊や

タンジェリンのIT坊やのネタバレレビュー・内容・結末

タンジェリン(2015年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

ショーンベイカー作品。
「アノーラ」中盤以降のジェットコースター感は、この文脈から来てたんですね!

アップテンポの曲に合わせ、「浮気相手」を探し始める序盤のシーンが好きでした!
また、最低な群像劇、特にドーナツ屋のめちゃくちゃ加減には笑いました。

登場人物たちは、ほぼ全員ダメな人達で、主人公シンディは特にヤベー奴です。
ろくに事情も聞かずに女の子をボコリまくるし、情報を提供してくれた人のご飯(しかも炊き出しのもの)を無意味に台無しにするし。
自分の感情や怒りが優先されるばかり。観ていてかなりモヤります。

ただ、だからこそと言うか、ラストの親友同士の連帯には、独特な深みを感じました。
世の中は行儀良く振る舞える人ばかりではないし、むしろそういう人達こそ、生きづらさを抱えているものだと思います。
だからこそ、連帯は生きる原動力であったり、命綱になったりするのでしょう。

アルメニア人の買春男や、セックスワーカーの白人女性、あの人達のラストはかなり寂しいのですが、それは、あの場面に「友人」が登場しないから。逆に、違いはそこしかないように思います。

アレクサンドラだって、シンディの男とヤってる訳で、配慮は足りません。
でも、彼女と友達で居たいという気持ちは本物だろうし、とりあえず「友情」ってのは、そういう比較的軽いものでも良いのではないかと思います。それでも、十分に救われる瞬間はあるから。
(友人間でのNTRなんて、絶対に嫌だけども)

また、自分の中にも、登場人物たちのようなダメさはあります。
ラストシーンには、「完璧に生きようとしなくても、誰かと繋がっていればそれで良いじゃないか」という、優しさのようなものも感じました。

凄まじい勢いからの、少ししんみりするラスト。型はアノーラと似ていますが、見比べてみると、いかにパワーアップしているかが分かりますね!
今後も、ショーンベイカーは追いかけて行かねば!(まずは他の作品を観ないとですが)
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