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ザ・サークルのkiritoのレビュー・感想・評価

ザ・サークル(2017年製作の映画)
3.8
【監視】

<問題>
20xx年。国家は「青少年を保護するため」に、ある法律を制定した。
それは子供を有する親にのみ、「有罪判決が確定した子供を対象とした性犯罪を常習的に犯した者の氏名・住所・顔写真等の個人的情報」を市に申請すれば取得できるというものだった。
この法律の憲法上の問題とはなにか。
どうでしょう。こんな法律は許されるでしょうか。


全ての情報をサークル加入者全員が共有出来たらどんな世界になるか。
不正もなく、隠しごともできないから政治家にとっては生きにくい世界。それが真の民主主義である。
そして隠れていた犯罪者も情報が共有されることで、この世界には生きられなくなる。それが安全な世界。
これは、そんな理念を実現しようとするある会社の物語。

テーマとしては非常に面白い。
インターネットの発達により「search」のように個人でも事件を解決できる時代がやってきた。
一方で、「スノーデン」が警鐘を鳴らしたように何かや誰かに監視され情報が集約される時代でもある。

情報管理によって、住民票や戸籍が管理され手軽に公的情報にアクセスできる未来は日本でもそう遠くないかもしれない。マイナンバーをもとにネットで投票ができる時代がくれば家でも投票ができ、ひょっとすれば若者の投票率もあがるかも。

でも果たしてそんな便利な世界に弊害はないのか。

公開当初不評だったので、劇場スルーしたけど、レンタルでみればおつりの来る面白さだった。
てっきり、エマワトソンを愛でるだけの映画かと。失敬失敬。

最後の終わり方は物足りないのは事実だが、「サークル」の世界にだんだんとのめりこんでいく主人公に恐怖を感じた。

ふと電車の中をみれば、人はスマートホンと会話をし、周りをみず、ネットの海におぼれている。
これは一企業の物語ではあるが、もし国家がこの話を実現しようとしたら?
そこは権力者だけが優遇視され、一般市民の情報のみが筒抜けになる世界になるかもしれない。
「組織的犯罪処罰法改正案」通称「共謀罪」をみてもあながち遠い未来ではないかも。
監視するのは常に国民の側からでなければ・・・


2019.5.22
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