8さん

或る終焉の8さんのレビュー・感想・評価

或る終焉(2015年製作の映画)
3.8
ある看護師の献身愛と葛藤が導く命の果てを描いたサスペンスフルなヒューマンドラマ作品。

デヴィッドは、終末期患者の看護師をしていた。妻と娘は、息子の死をきっかけに疎遠となり独り暮らし。彼には、患者の在宅看護とエクササイズに励む以外の生活はなく、患者が望む以上に彼もまた患者との親密な関係を必要としていた。

ある日デヴィッドは、末期がんで苦しむマーサに安楽死を幇助して欲しいと頼まれる。患者への深い思いと、デヴィッド自身が抱える暗い過去…、その狭間で苦悩する彼が下した壮絶な決断とは…


『孤独な魂が寄り添う…親密なる最期のとき。』


多くを語らず細かい説明を省き、観る者の解釈に任せる物語の構成は、想像力を掻き立てられ自らの知識や考え方によって、作品の印象は大きく変わってきます。今作ではそんな巧みな手法で撮影された、重いテーマで生きてる上で避けては通れない問題の作品です。

人間性を踏まえ冷静な判断力を問われるこの職場では、肉体的・精神的な痛みが伴う。当事者、援助者、家族それぞれの想いが合致する事は難しい。しかしながら、少しでも当事者の思惑に沿った答えを見つけ出さなければならない。

人はこの世に生を受け成長し、人生を謳歌した後に退化していく。

何を見て、何を思い、何を喋り、何をしてきたのか…

医療的な見解も含め、看護師デヴィッドの見る視線の先には目に見えない人間らしい最期の時が見えていたに違いないと思う。

そうだからこそ、あのラストに待ち受ける結末は衝撃であり、言葉を失ってしまう…
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