ぐっない

シン・エヴァンゲリオン劇場版のぐっないのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

大人になれなかった、ガキのままだった彼らがきちんと齢をとって生きていること、それだけでいいと思えた。いつだって隣にいる人を傷つけながら本当に言いたいことは喉につっかえたまま「世界」っていう大きすぎるものを背負って生きていた不器用で不格好で未熟で歪な彼らがエヴァンゲリオンを終わりにすることができた。よかった。ほんとうに。

私は昨年の夏旧劇と新劇を観終えて、アダムとかリリスとかさえぜんぜんよく分かっていないまま劇場へ行ったので八割くらい何を言っているのかも何が起きているのかも分からず、分かるのは彼らの感情の機微だけでした。木漏れ日が照らす手、頬を伝う汗、ひかりみたいな水、いつか芽吹く小さな苗、おまじない、生活を積み重ねて明日を待ち生きること、そのすべてが美しく、すばらしいと思うし分かっているのに自らの欲望から目を逸らせないことや何かを守るのに何かを傷つけなければいけないときがあること、寂しさ苦しさ辛さ孤独、言葉に当てはめられない心臓をえぐりたくなるような気持ちがどうしてか湧き出てくること、遠くの国の悲しいニュースに胸を痛めながら隣に住む人が泣いてることさえ知らずに眠ること、生きることの美しさと極個人的な負の感情の矛盾にどうしていいかわからなくなり引き裂かれるような身体。そういうのぜんぶ、ぎゅっとしてろうそくみたいに火をつけてふうっと消してくれるような映画だった。

映像も音楽も、なんだかもう圧倒されてシートに押し付けられてしまった。素晴らしかった。
最後のシーンは、ずっと憶えているとおもう。
ぐっない

ぐっない