【千年の孤独】
シャンタル・アケルマン監督がロードムービー仕立てで描いた1978年の作品。
〈あらすじ〉
映画監督のアンナは最新作のプロモーション活動のため、ヨーロッパ各国を巡る旅をしている。ドイツの地方都市で出会った小学校教師とは、肉体を重ねるがそれ以上の関係にはならずそのまま別れてしまう。その後アンナは、ベルギーのブリュッセルに住む母と母の友人に会いにいき、母の友人には、早く結婚と出産をするようにと急かされ、母へはレズビアンの経験があると告白し動揺させてしまう…
〈所感〉
アケルマン3作目の鑑賞。アケルマンの映画はいつもながら全く感情移入できないが、とても静的で会話していない時の方が心地よい。何も起きないからこそ見たくなるとは不思議な動機である。私、あなた、彼、彼女は既にアケルマンに囚われている。最初のプラットフォームからホテルの部屋まで終始シンメトリーな構図が見られ、それらの中にぽつんと一人溶け込むアンナという人物を長回しで映すことで、彼女の空虚な孤独感をよく描けているように思う。エンドロール前の留守電の垂れ流し。意味の無い無意味。誰と話しても満たされない千年の孤独を2時間で味わえる。アンナは常に旅人であり、帰るべき場所などない。流れ者にはそんなアイデンティティの不在による不安が四六時中付き纏う。旅先のホテルで故郷を、母を、愛人を想う。