スズタカ

僕だけがいない街のスズタカのレビュー・感想・評価

僕だけがいない街(2016年製作の映画)
3.0
"僕だけがいない街"について、この実写版しか無ければ、怒るほどダメな映画だとは思わないのですが…原作漫画とアニメ版がある訳です。

それらを見てしまっていると、この実写劇場版が、"僕だけがいない街"の大切な部分を表現できていないことが分かるので、非常に残念です。

実写版は、単に"エピソードそのもの"を並べているだけですが、"僕だけがいない街"という作品の1番の魅力は、その突飛な設定や展開ではなく、各エピソードに至るまでの、丁寧で繊細な演出にあると思っています。

それは例えば、悟の家に加代が泊まった翌朝の朝食シーン。実写版では、いきなり加代が泣き出す。

これでも分かる…けど、これだけじゃ、全ッ然ダメ!足りないです!!

原作漫画とアニメ版では、朝食を目にした加代がいきなり泣くのではなく、その直前に、自分の家では、食卓に親がいないばかりか、カップラーメンが無造作に置いてあるだけだったり、小銭が雑に投げ捨てられているだけなのを思い起こすカットがあり、それが観客に加代の気持ちと同期をさせるので、作品中でも最も胸を打つシーンになっています。

こういった丁寧な気遣いこそが、"僕だけがいない街"の魅力なのに、何にも分かっていない。エピソードの数を減らしてでも、1つ1つを丁寧に描いた方が良かったのではないかな、と思います。

また、映画だからセリフに頼らず映像や音などで表現したい、という心意気は買いますが、作品として必要な悟のモノローグまでもカットしてしまっているのは、本末顛倒としか言いようがないです。

その弊害によって、加代が自分の手袋を外して悟の手に重ねたのは何故なのかも分かり辛くなってしまっていたし、悟の母親役がどうして石田ゆり子さんなのか、この実写映画しか観てないと、不自然にしか思えなくなってしまっていました…残念。

アニメ版のスタッフで作り直して欲しいな〜。
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