MikiMickle

あまくない砂糖の話のMikiMickleのレビュー・感想・評価

あまくない砂糖の話(2015年製作の映画)
3.7
オーストラリアの一家四人が1週間に商品する砂糖の量、6㌔‼1日に換算すると、ティースプーン40杯‼‼
実は砂糖は加工食品の80%以上に含まれている。監督・俳優のデイモン・ガモーは、自らが実験台となり、1日40杯の砂糖を摂る実験を行う。
スパーロックのジャンクフードドキュメンタリー『スーパーサイズミー』の砂糖版。
しかし、アイスやチョコ、ソーダ類、ジャンクフードを食べず、低脂質で栄養食品と言われるものなどでそれを補うのがルール。シリアル・低脂質ヨーグルト・スムージー・フルーツジュース・穀物バーなどで。運動も今まで通り欠かさずに行う。様々な医療チームの協力の元。
60日の実験でわかっていく事とは……

それをあくまでPOPに、楽しい視覚的効果によりわかりやすく、堅苦しくなく見せるドキュメンタリー。ヒュージャックマンなどのカメオ出演も楽しい♪


砂糖が健康面で良くない事は漠然とはわかっているけれど、私たちは砂糖について知らなすぎる。
どれだけ、日々の加工食品に砂糖が含まれているのかも。正直、食べ物に含まれる砂糖の量に愕然とする。
実際に食べているもの(例えばシリアルとヨーグルトなど)を、無糖のものに置き換えてそこに“砂糖”そのものを実際にかけて比較する実験など、胸焼けしかない。寒気がする。山のような砂糖… でも、それを普通に食べているのだから…

彼の体はみるみるうちに変化をみせる。体重増加はもちろんの事、内臓脂肪の増加と肝機能の低下。肝臓のメカニズムは、急激な砂糖摂取に全く追い付いていない…

しかしそれだけではなく、心にも変化が。
日々、疲れていく体。やる気がなくなる。集中力も低下し、イライラする。
しかし、糖分を摂取すると躁状態となり、一気に元気になる。それは、血糖値の上昇と幸福感の反応なのだ。
しかし、またすぐに疲れが… これらが甘い物を欲する中毒へと変わって行く。糖分は体内と脳内で中毒を生むシステムになっているのだ。
衝撃的だった。甘いものは疲れをとるのではなく、疲れそこが砂糖の影響で、禁断症状なのだ。

そんな中、彼は旅をする。
まず、40年前まで自給自足の、糖分とはほぼ無縁だったアボリジニの人々の村へ。
西洋文化が入り、外来種は死滅し、自給自足から商店で糖分ばかりの食物と飲料を買い摂取する事に…その結果と政府の対応とは…
マウンテンドゥー中毒のケンタッキー州にも向かう。 赤ちゃんの時から哺乳瓶で飲み続けてきた彼らの歯はボロボロ。治療しようにも、糖分によるアドレナリンで麻酔が効かない。そして尚、彼はマウンテンドゥーを飲み続けるのだ…それほどまでの中毒性…
問題点は、それらを売り続ける企業へとも向けられる。冒頭でも述べられていた、1950年代にアイゼンハワー大統領が心臓病を患った事によって論争となった「脂肪原因論」と「砂糖原因論」。20年の論争により、脂質が悪者となり、糖分はその罪を免れた。その後の低脂肪食品ブーム。しかしそれでは旨みもカロリーも少なくなるために、砂糖が大量に使われる結果となったのだ。そして、糖分が問題になると砂糖業界は研究者達を研究資金によって手の内にし、広告業界を使い、糖質への疑惑をうやむやにしてきたのだ。肥満の原因はあくまで人々の運動不足とカロリーの摂取量の問題だと。そして、人の“旨み”感覚を“甘み”にすり変え、砂糖を増加させ、絶妙な中毒性によって操ってきたのだ。

さて、実験の60日たった彼の体。カロリー摂取量は実験前とほとんど変わっていないのだが、精神的にも体力的にも身体的にも、恐ろしい変化が起こっていた…
この映画を見ると、砂糖の恐ろしさはもちろんだけれど、加工品によって知らず知らずのうちに摂取している量の恐ろしさを感じる。マウンテンドゥー中毒の町も極端な例ではない。

私がここに書いたのはあくまで映画のごく一部。目からウロコの真実と、専門家によるデータと、そして映画としてのエンターテインメント的面白みとがきちんとある映画。
アホなPVがあったり、研究者のコメントが商品の広告みたいになっていたり(これ、単純に気楽に見れるのと共に、食品業界への皮肉になってて面白い)、ドキュメンタリー映画としては珍しく日本語吹き替えがあるのも、これを子供たちが見て考えて欲しいという狙いを感じる。

正直な所、全くショ糖や果糖を取らずに生きていく事は完全に無理だ。全否定などは出来るはずもない。
しかし、この映画は自分が何を摂取しているのか、改めて考える良い機会になると思う。甘いものを食べる罪悪感を植え付ける映画では決してなく、事実を知る知的好奇心をくすぐられる映画である。そして、知らず知らずに不健康と中毒になってるなんて、すごい嫌だ‼ そんな、素晴らしいドキュメンタリー。
MikiMickle

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