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団地妻 隣りのあえぎの一のレビュー・感想・評価

団地妻 隣りのあえぎ(2001年製作の映画)
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傑作!僕の好きな時代の日本映画で描かれてきたような結婚の不条理を、ポルノグラフィーとして見事に語り直していて感動した。セックスによる逃避は、わかりやすく海に象徴されるが、"空き部屋→乗り物→海"という一連のパターンが3度ほど繰り返されていて、そのどれもがイイ。中川真緒と田尻裕司(もちろん『OLの愛汁 ラブジュース』『姉妹OL 抱きしめたい』を監督した田尻裕司だよ!)が隣室のセックス声(田尻の妻・佐々木ユメカと間男のそれなのだが)が漏れ聞こえる空き部屋で初めてセックスをしたあと、バスの車中で中川が言う「なんでだろう バスに乗ってるとすごく眠くなるの」とか、海を眺めながらの「いいよね、海」とか、何の気ない台詞がすごく印象に残る。2度目は中川がひとり寡黙にそれを反復。3度目は二人でいよいよ鎌倉まで遠ざかる。狂ったように泣きながらセックスを求める中川と、怖気づいて逃げ出す田尻の浴衣でのチェイスは間抜けだが切実で、男をボコボコにしたあとに女がそこから見る海はもう行き止まりの壁に変わっている。失意のまま帰宅した中川は壊れ気味な夫・伊藤猛と畳の上でダンスする。決してめでたしじゃない、諦めのダンス。鈴木英夫『目白三平物語 うちの女房』で望月優子と佐野周二が畳の上でダンスするシーンが大好きなのだが、それとは比べ物にならないくらい虚しいダンス。
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