スズタカ

クリーピー 偽りの隣人のスズタカのレビュー・感想・評価

クリーピー 偽りの隣人(2016年製作の映画)
3.4
俺にとっての地雷監督…それが黒沢清さん。

「岸辺の旅」を観た時に、その前の「リアル」から溜まっていたものがいっぱいになり、もう2度と黒沢作品は観るまい!と心に誓ったのですが…予告編があまりにも面白そうだったので…観てしまいました。

結果、これまで観た黒沢作品の中では、1番楽しめました!

いわゆる、(引っ越し先の隣人が、得体の知れない不気味な人物で怖い話)ですが、キャスト陣の熱演もあって、事態が拡大して行く第二幕までは、その展開にぐいぐい引き込まれました!

西島さんの不器用なほど生真面目なのに、妙に自信家な感じとか、香川さんのぶっ飛んだキチガイ演技とか、ほんと最高に楽しかったです。

香川さんは、何故か常にくるぶし丈のズボンを履いていて、それすら不気味で怖いっていう…笑。まぁ、色々最高です!

撮り方とかは文句なく上手い。鮮明で繊細な映像美であったり、風景だけでの不気味さ演出など…まぁ〜、舌を捲くほど、上手い!上手い!

だけど…撮り方の上手さや映像の綺麗さとかだけで、映画の良さなんて決まらないし、何より問題は、結論にあたる第三幕かなぁ、と思いました。

この映画、第二幕までに、とにかく大風呂敷をどんどん広げます。第三幕に入る時には、謎の数が、半端ない状況になっています。

例えば、「犯人は誰?」から始まって、「犯人の動機は?」、「犯行現場は何処か?」、「殺害の凶器は何?」、「犯行の手口は?」、「香川さんは何者?」、「過去の未解決事件との関連性は?」、「犯人は何故、コの字配置の家の並びにこだわるのか?」等々……。細かいことを挙げて行くと、まだまだキリが無い。

で、第三幕で、数々の謎のうち、何点かだけ種明かしする方法を取っています…が、その判断が失敗していると思いました。

「犯人が誰か?」だけで良かったのに、それ以外に明かしている「犯行現場」、「殺害の凶器」、「犯行の手口」が余計だと思いました。

全部嘘っぽいというか、現実としてあり得ないというか…信じるにたり得なく、一気にフィクション度が上がるし、何か事態が矮小化された様に感じて、何だか俺はシラけました。それが勿体なかったですね。

とはいえ、なかなか良い感じのホラーです。何より、香川さんの演技が超・面白いので、それだけでも、観る価値ありです!
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