このレビューはネタバレを含みます
もう愛してない。ひとかけらも。
これは、
あなたはもう私のことを愛してない。ひとかけらも。
そのことを訴える言葉だったのかもしれない。だって、なつこは、ダメダメなゆきお君を、それでもとても大事に思い、彼の何気ない言動に傷つく(そしてきっと不倫も勘づいていた)のが冒頭のシーンだけで、しっかりと伝えられている。
でもその真意を確かめようのないのが、誰かが死んでしまうということ。
失ってから後悔したって遅い。けれど、主人公にとって後悔することすら初めはできなかった。
目を背けていた妻の人間性=子どもと笑う写真を受け入れて、子どもを持つという選択をしなかった、そういう関係性を築けなかったことを後悔したとき、同時に初めて哀しむことができたのだ。
始めから終わりまで、喪失もの映画にありきたりな言い回しや行動を使わないところがとても良い。それでいて普遍的な人間、それぞれにダメでそれゆえ愛しい人々を描いていて、なんて凄い監督さんだろうと惚れ惚れ。
何度も繰り返し観たい映画でした。