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永い言い訳のariiiのレビュー・感想・評価

永い言い訳(2016年製作の映画)
4.0
"現実を生きる。"

もし大切な人が当然いなくなってしまったら。
忘れることも大事?断ち切ることも大事?

考えるだけでもつらい出来事。
ましてやまだ幼い子どもたちが親をなくす苦しみ。
なのに前を向いて変わらず懸命に生きていく姿には胸を打たれた。

子どもがいるから幸せ、なのかどうか。
子どもを持ったことのない私にはわからないけれど、幸せのイメージしかしたことがなかったから。

親子だって夫婦だって友達だって。
関係性は明日にでも変わる。

"自分の幸せの尺度だけでものを言わないでよ。"

食卓でのシーンは考えさせられたな。
幸夫くんはきっと寂しかっただけなんだろうなとは思うけれど、その寂しさを埋めるために、必要としてほしくて言ってしまう言葉の数々。あるなあ、あるなあと観ていた。

人は独りでは生きていけない。
誰かに必要とされたい。

どんなに悲しくてもどんなにつらくても、日常は刻々と淡々と静かに確実に進んでいく。

「家のことだって受験のことだってトラック乗ってて何がわかるの?
興味がないじゃん。
僕が勝手にやってることだから。
勝手に塾行って、勝手にサボって、落ちて、でいいでしょ別に。
お母さんだって勝手に死んだし。
殴ったって痛いだけだよ。
何も変わらないよ。
幸夫くんだって帰ってこない。
良い父親ぶって話もできない。
やだ。
僕そんな風になりたくない。
お父さんみたいになりたくないの。」
めちゃめちゃわかる。わかる。わかる。
言って良いことと悪いことはあるけど、めちゃめちゃわかる。

親は子どもが心配で、子どもは親にわかってほしくて。
ただそれだけなのに、すれ違って、言いたくないこと言って傷つけて。
大切だから、言っちゃう。
言って、後悔する。
痛いほどにわかる。涙が出てくる。

幸夫くんの優しさに子どもたちはどれほど救われただろう。
血が繋がってるとかそんなの関係なくて、大切な人は大切。
ずっと大切同士でいれたらいいよね。

「お母さんじゃなくてお父さんだったらよかったのに。」

人間の心は強くて弱い。
大人になっても親になっても。

「生きていればいろいろ思うよ、みんな。
でもね、自分を大事に思ってくれる人を簡単に手放しちゃいけない。
みくびったり、おとしめちゃいけない。
そうしないと、僕みたいになる。
僕みたいに、愛していいはずの人が誰もいない人生になる。
簡単離れるわけないと思ってても、離れるときは一瞬だ。
そうでしょ?
だから、ちゃんと大事に握ってて。
君らは、絶対に。」

生きていたらどんな人と出会ってどう影響し合うか、意外と時間が経ってからじゃないと気付けなかったりする。
もっと大切にしておけば良かったなと思うことなんて山ほどあって、離れていってしまった人を取り戻すことはできないに等しい。
言った言葉は取り消せない。
思ったことを全部感情のままにぶつけてしまう前に、頭で一旦考えなければいけないね。それは大切な人ほど。
なかなか難しいけれど。

誰もが愛されたくて、愛したい。
当たり前のように愛されているときにはその大切さに気付けなくて、失ってから思い知る、なんてこと、どこかの映画にも出てきそうだけれど。
自分が思ってる以上に相手に伝えないと繋ぎ止められなかったりするもので。
ありがとうとごめんねは魔法の言葉だなあと思ったり。
失う前に、伝えたい。
大切な人に、大切と思ってもらえるように、自分からたくさん愛を伝えないとね。
改まってだと恥ずかしいけど。

竹原ピストルさんの演技、想像以上に良かったなあ。
そして何よりも子どもたちが可愛かった、愛おしかった。抱きしめたくなった。

とっても良い映画だったな。
大切に気付くまでの、永い言い訳。

原作本を持っていて、読む前に観たいなと思っていてタイミング逃していたので観れて良かった。
すぐにでも読み始めようと思います。

家で観るとどうしても100%集中できるわけじゃないから、やっぱり映画館で観たい!映画館で観るのがやっぱり好き。
またいつか見直したいです。
ariii

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