まさ

永い言い訳のまさのレビュー・感想・評価

永い言い訳(2016年製作の映画)
3.6
妻をバス事故で亡くした作家。しかし、彼は浮気の真っ最中。妻への愛がない、というより空虚に溺れる彼。その空虚を満たそうと貪るように愛人との関係を求めるも満たされない。妻の死への悲しみさえ生まれない。妻とともに事故に遭った妻の親友の家族との出会い。そこで買って出た子供の世話を通して、彼の空虚が少しずつ変化する。最初はぎこちなかった関係も少しずつ心を通わせていく。子供の新たな見守り役への嫉妬と敵意が、彼の変化を裏付ける。やはり守りたいと思うものの存在は大きい。妻でも愛人でもなく、他人の子供で満たされる空虚。それはあまりに身勝手で、紡がれる言葉は結局「言い訳」にしかならない。でもふと思えば、自分も空虚、身勝手、言い訳をたくさん抱えている。人はその身勝手さや言い訳と向き合いながら、なんとかしようと日々もがいているのかもしれない。そして何とも背中にある「正しさ」という十字架が重い。本作品で、竹原ピストルの熱を放つ演技は特筆すべきだが、なにより彼の娘役を演じた子役の白鳥玉季がこの作品の世界全体を支えていた。既に様々な作品に出演する彼女だが、今後の彼女の活躍を見守りたい。
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