ぶちょおファンク

美術館を手玉にとった男のぶちょおファンクのレビュー・感想・評価

美術館を手玉にとった男(2014年製作の映画)
2.0
類い稀なる技術で絵画やイラストの贋作を描き、
それを本物と信じさせ30年にも渡りアメリカの多くの美術館に“寄贈”したマーク・ランディスという人物を追ったドキュメンタリー。

事件とランディス(精神疾患)と彼を執拗に追った元美術館学芸員の面白さや奇抜さのみに焦点が当てられ、
問題の根幹部分はサラッと表層面しか描かれておらず突っ込みが甘いかな…。
そこは意図的なのかも知れないけどただドキュメンタリーとして映し出すのではなく、
もう少し問題点を引っ張り出して欲しかった…!
この辺はどうも監督が複数人いるのが1本の作品としてブレてネックになったと思われます。

基本的には“美術館とお金”、
そこにも絡んだ“善意の寄贈”が贋作発覚を遅れさせたようで(気づいていても美術館側のプライドで口外しなかったって部分もあるかな)、
絵画に精通した学芸員は騙せても(審査は通っても)、
ちゃんとした専門機関で絵画の真偽を鑑定すれば簡単に贋作だと判明しただろうに費用がかかるからしなかったのか?
多くの美術館ではなんの疑いもなく贋作を展示していたそうだ。

これらの構図はランディスの贋作にも通ずる面はあると思う。
彼の贋作はホームセンター等で普通に買える物で作られている。

本気の贋作、たとえば15世紀の絵画ならその時代にしかなかった絵の具の調合をするだけでも大変な労力が必要となるのに、
ランディスの贋作のシミはコーヒーでつけたりしており、
目で見た表層面は名画かも知れないけど、
精査すればすぐに偽物だと分かるはず。

ここが一番の問題点で、
それは絵画のみ当てはまるもんではなく全てのことに通じると思う。
表層面の美しさ、面白さ、悲しさ、醜さ…等々だけを見ていたのではその真偽のほどは分からない。
ただ偽物だから劣る、価値はないと決めつけるのもまた正しくはないし、
そこでの評価の違いもまた人それぞれの価値観。
今作に★2をつけるヒトがいれば★5をつけるヒトもいるように。

2020年20本目