Yukenz

13時間 ベンガジの秘密の兵士のYukenzのレビュー・感想・評価

3.9
これが実話だとは言葉を失ってしまう…そこにルールなんてものはない、あまりに残忍な殺し合い。とてもとても重たい内容だった。

アメリカ同時多発テロから11年目の 2012年9月11日にリビアで実際に起きたアメリカ領事館襲撃事件がベースの作品。
その発端はアメリカで製作されたアマチュア映画がイスラム教を侮辱しているとの抗議だった。この感覚は多くの日本人には受け入れ難いのではないだろうか。

路上でいきなり銃口を向けられる。敵なのか味方なのかも判別できず、しかも言葉も通じない。逃げ出したくても逃げ出せない状況にどう対峙するのか?序盤から緊迫感が続き心拍数が上がる。恐ろしいが現実の世界。こんなテンションの山が幾たびも訪れる。

銃撃戦の波が引いた束の間の静寂のなか、メインキャラのジャックが言う「中断の時間が最悪だ、アドレナリンが引き心が揺れ始める」という言葉が印象的だった。家族の事を思い出し死の恐怖に駆られ自問が始まる。

それでも銃撃戦が始まるとまた反撃に加われるのは、共に命をかけて戦う仲間との会話を通じて使命や連帯を再確認出来たからなのかもしれない。

本作はアメリカ側からの視点で描かれているが、終盤僅かに挿入された映像にあるようにイスラム側の視点から見れば彼らなりの正義があったのは確かだろう。争いの多くが宗教が理由になっていることは歴史が示している。

相入れることのない絶対的な障壁。
やるせない現実だが、それをいかに寛容に受け入れるかが現代にまで続く世界の課題であろう。
Yukenz

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