ブタブタ

ディストラクション・ベイビーズのブタブタのレビュー・感想・評価

4.5
『レクイエム・フォー・ドリーム』が「ドラッグダメ!ゼッタイ!」映画であったように本作は「暴力ダメ!ゼッタイ!」
映画だったなと。
映画としてこれ程面白いにも関わらず、暴力描写をアクションや娯楽ではなく、且つ「かっこいい」と描かない。
見てるコチラにも痛さと嫌さと理不尽さが伝わってきますす。

暴力を振るうだけでなく「受ける」事にも快楽を覚えるキチガイぶりとわけのわからなさが本作を狂った次元に押し上げていると思います。

挿入される監視カメラ・2ch・ニュース映像の使い方も生々しい暴力とそれとは対照的にに冷たく無責任に突き放す様に乾いていて、そこで行われる暴力が現実ではなく別世界の出来事の様に見えて、『クローズ』シリーズ(未見)等の「ファンタジー暴力映画」にはない、「ファンタジーとしての暴力世界」が(逆に)感じられ、『クロニクル』の様な非現実感、これ程まで非道な行為が行われているにも関わらず、何処が清々しさ清潔感があるのもSNSやTVのニュースの効果的な使われ方のせいかと思いました。

泰良(柳楽優弥)1人だけ、もしくは泰良と価値観なり「強いヤツに挑む」と言う同じ目的を持った不死身の超人(笑)が相棒として傍らにも居たら単なる喧嘩行脚のロードムービーになっていた所に、やはり祐介(菅田将暉)と言うどうしようも無い屑のキャラクターを配する事で暴力の否定と一見JUMPヒーローの様に最強を目指す泰良もろくでなしである、所詮コイツらは同じ屑だと映像によって雄弁に語っていると思います。
なので菅田将暉さんの演技とその存在は重要で本作の裏のと同時に真の主役とも思えて菅田将暉さんは大ブレイク中で出演作が続きますがやっぱりすごい役者さんなんだな~と。

泰良=タイラー・ダーデンで泰良のやってる事は個人による『ファイト・クラブ』なのかもしれませんが、でもそこに友情とかカルト集団的な集まりに発展する事とかは決してない所が本作をより殺伐として暴力のみに純化した映画にしていると思います。
暴力=非日時の世界であり日常の中に突然現れる泰良はまさにモンスターで、こちらの常識や話しが一切通じない完全な「他者・異物」としての存在感。

泰良の弟 ・将太(村上虹郎)が泰良を捜し求める様と二人の関係はちょうどファイトクラブのタイラーとジャックにも見えました。

ゲスキャバ嬢の小松菜奈さんは今までお飾り的なトロフィーヒロイン役しか見た事無かったので(『渇き』は未見)主役コンビに負けぬ劣らずの屑っぷりで普通は被害者、こういうヒロインが酷い目に合うとそのせいで主人公に感情移入出来なくなってしまうのですが前記の通りいくら酷い目に合わされても少しも可哀想と思えない屑なので、そのへんのキャラクター設定、配置も凄く上手いと思いました。

『ヒメノア~ル』『ディストラクション・ベイビーズ』と超暴力映画の傑作がなにやら続いてますがこの流れを切らず更に凄まじい暴力映画が見れたらと思います。
ブタブタ

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