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ATARI GAME OVER アタリ ゲームオーバーのsomaddesignのレビュー・感想・評価

5.0
プレステやXBOXよりもはるか前。
ファミコンよりも前に「アタリ」というテレビゲーム機がありました。正確にはアタリ社の出してた「Atari2600」というハード。
77年発売当時としては画期的な「ゲームセンターのゲームが家庭で遊べる」「カセットを入れ替えるだけで、違うゲームが遊べる」といった、今のゲーム機の基本形を作った名機でもあります。
まだ一般にはコンピューターがSFの世界の話だった頃、身近な娯楽として各家庭にコンピューターが普及したのも画期的。

一時は業界全体で7500億円を超える一大産業へと発展し、アタリ社自体もシャア80%を誇る有望企業へと成長します。

が!82年のクリスマスを境に事態は一変。
右肩上がりの成長を続けていたゲーム業界とアタリ社は大きく減退します。例年のようにクリスマス商戦に向けて、大量に在庫を抱えていたにもかかわらず、急にユーザーにそっぽを向かれてしまいました。
原因はサードパーティ製のソフトも含めて、クソゲーがあまりに乱発されたため、ユーザーの信頼をすっかり失ってしまったからです。
中でも「史上最悪のクソゲー」の悪名高い「E.T.」は、映画のメガヒットに便乗してわずか5週間で作られたせいか、発売されるや大不評。ゲームは大量に売れ残り、アタリ社は経営が悪化、遂には倒産してしまいます。

ゲーム業界を襲った悲劇「アタリショック」の象徴的存在となったクソゲー「E.T.」は、さらに数奇な運命をたどります。
「売れ残り、返品までされた大量の在庫が、砂漠のどこかに埋められ、そこはテレビゲームの墓場になっている」という都市伝説まで生まれました。

……と、ここまでが映画を見るまでの知っておくべき前置き。
ゲームの歴史の詳細や正確なトコはwikiや専門サイトに任せます。

果たして都市伝説はホントか?
のみならず、「一体なぜそんなクソゲーができたのか?」「なぜアタリショックは起きたのか?」まで肉迫するおもしろドキュメンタリー。

ゲーム業界全体のパブリックな話から、一人の天才ゲームデザイナーの栄光と挫折・再生といったパーソナルな話まで、視点がズームイン・アウトするのが面白いし、天職に出会いながらも不遇をかこつしかなくなった人の物語としても、胸熱。予想外に感動的なラスト。
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