すずき

ダークタワーのすずきのレビュー・感想・評価

ダークタワー(2017年製作の映画)
3.8
少年ジェイクは毎夜悪夢に悩まされていた。
不思議な能力を持つ少年少女達のカを奪い、そのカによって世界を支える「塔」を破壊しようと行動する黒衣の魔導士。
それは異世界の出来事だが、ジェイクはその異変がこちらの世界にも影響し、世界は崩壊へと向かっている事を確信する。
しかしジェイクの親はそれを妄想と一蹴し、彼を施設に入れようとする。
施設からの使者が黒衣の男の手下だと気づいたジェイクは家を飛び出し、夢の導きのまま、異世界へと繋がるポータルを発見する。
異世界へと辿り着いたジェイクは、黒衣の男に対抗できる唯一の存在、最後のガンスリンガー・ローランドの元へと向かうが…

原作はS・キングの長編小説で、イドリス・エルバ主演で映画化。
一般的にはポンコツ映画の部類の本作。
ボンクラを覚悟して見たけど意外に面白かった。
「スーサイド・スクワッド」「パシフィック・リム:アップライジング」とか、評価の低い作品を普通にグッと来る時がたまにあるんだよねぇ。

原作はS・キングが完結に30年を要し、完結後は一度は引退を宣言するほどに入れ込んだライフワーク的作品。
過去作のキャラクターも登場し、全てのキング作品世界の中心に位置する壮大な作品らしい。
本作でも、「IT」のペニーワイズや、「シャイニング」のシャイン(輝き)と呼ばれる能力が(名前だけ)登場する。
原作全7巻の大作を、僅か90分の映画に仕立てる事はそもそもが不可能で、原作ファンには辛い出来なんだろうなぁ。
私は原作未見なので、普通に楽しんじゃったけど。

さて、前置きが長くなったけど、本作の内容はというと、魔導士を倒す為に旅を続けるファンタジー作品である。
ただし、主人公は剣士ではなく、銃士。
「我は手で撃たぬ(中略)心で撃つ!」とポエムを詠唱しながら、旧式のリボルバーでトンデモなガンアクションを繰り出す、厨二センス溢れる作品。
最後のガンスリンガー(←この言葉がもうカッコいい)・ローランドを演じるイドリス・エルバが超カッコいいんだ。
悪役の黒衣の男ウォルターを演じるマシュー・マコノヒーも素敵で、井上和彦の吹替もハマってる。
強大な「シャイン」を持つジェイク君を演じる子役もかなりの美少年。

不満点は、厨二カッコいいガンアクションが本格的になるのが、クライマックスになってからである事。
中盤にあのレベルのアクションがあって、クライマックスにさらにギアを上げる、ぐらい見せてくれれば尚良かった。

クライマックスの、発射した銃弾に更に発射した銃弾を追い付かせて、ビリヤードのように弾を反射させる技、同じ銃なら弾速も変わらんから無理やろ…。
と思ったけど、銃弾発射後、標的に命中するまでの間に銃弾並の速度で腕を突き出し、そのスピードをプラスしてもう一発発射すればワンチャン可能か。
或いは、全く同じコースだと後ろの銃弾の方がスリップストリーム効果で追いつく事が可能、とか?
漫画だったら「あ…あの技は!」「知っているのか雷電!?」みたいな解説キャラが解説してくれそうな技。
やはり漫画っぽくて厨二だなぁ。

主人公の持つ銃が、一見旧式のリボルバーだけど、アーサー王のエクスカリバーから作られている、という設定も厨二センス全開で最高。
剣と魔法ならぬ「銃と魔法のファンタジー」路線は開拓の余地がまだまだありそう。
この路線で他にも見てみたいので、一般的なジャンルにならないかな。