あんがすざろっく

ベイビー・ドライバーのあんがすざろっくのレビュー・感想・評価

ベイビー・ドライバー(2017年製作の映画)
4.5
音楽、殊更ロックがフィーチャーされたり、絡んでいたりする映画は、絶対見逃したくない僕である。エドガー・ライトは初体験な訳だが、恐らくタランティーノ以降の映画人で、彼からの影響を全く受けていない人はいないのだろう。音楽の使い方、台詞のやり取り、其処彼処に正にそれが伺える。誤解を覚悟で言えば、この作品は、映画大好き少年の夢のような映画だ。監督だって、そんな少年だったはずだ。天才的なドライブテクニックを持つ若者が、否応なく闇社会の仕事の片棒をかつがされるが、素敵な女性と恋に堕ち、汚い仕事から足を洗おうとする。車、スピード、ワル、淡い恋模様。これだけ揃ったら、映画キッズはもう大喜びだ。その単純さが、却って嬉しかったりする。難しい話は要らないのだ。
かと言って、決して子供向けの話ではない。主人公に立ち塞がる危機は、ハラハラさせるものだし、そのサスペンスの盛り上げ方は甘っちょろいものではなく、先が読めない非情な展開を含むものもある。この話の進め方が上手かったから、最後まで楽しめたのだろう。特にラストの展開、主人公のカップルの末路はアメリカン・ニューシネマをなぞってしまうのかと、手に汗握ってしまった。キャストに関しては、まさかジェイミー・フォックスにあんなアクの強いキャラクターが演じられるとは思わなかったし、ケヴィン・スペイシーは、正に貫禄の存在感。
エイザ・ゴンザレスの色っぽさも最高だったし、彼女とジョン・ハムのカップルは、それこそ破滅型のボニー&クライド、いやあの銃撃戦は否応なく「ヒート」を思い起こさせる。しかし、一番素晴らしかったのは、ヒロインのリリー・ジェームズだ。「あの頃ペニーレインと」のケイト・ハドソンを彷彿とさせる魅力は、今回の発見だった。肝心の音楽に関して、冒頭のジョンスペのベルボトムズ、これは最高だった。が、そこがあまりにも突出してしまっていて、他のナンバーがコモドアーズのEasyしか印象に残らなかった。それでも、ストーリー自体大変楽しめたので、良しかな。自分専用に、ドライブ用BGMを作りたくなります。
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