TakahisaHarada

バービーのTakahisaHaradaのレビュー・感想・評価

バービー(2023年製作の映画)
4.0
漏れ聞こえてくる感想から、肩身の狭い思いしそうだな…と思い少し敬遠してたけど、全然そんなことなかったし、男女それぞれの良さにも、キモさ・有害さにもちゃんと触れてるバランスが良かった。ラストも安易で荒唐無稽なオチじゃなく、グレタ・ガーウィグっぽい好感が持てる着地なの良かった。
コメディとして楽しめるけど、ストーリーは引き込まれるほど面白いわけではない…とも思った。

冒頭の「2001年宇宙の旅」パロディからめちゃ笑った。その後も階段がない、牛乳も想像、踵を地面に着けられないとか、人形遊びあるある的なコメディが満載で楽しい。
妊婦のミッジ、アラン、シュガー・ダディ・ケン、イヤリング・マジック・ケン、ビデオガール・バービー、グローイング・アップ・スキッパーとか、黒歴史が続々登場するマテル社ギャグも、リアルタイムで体験してたら相当面白いんだろうな。

男女格差については、「男性が阻んでる」とか「ガラスの天井」みたいな被害妄想レベルの内容に留まってない所がすごく良かった。本作のバービーみたいに冒険する人間がそもそも少ないし、女性同士連帯せず足を引っ張り合うから数十年間チャンスを与えられても国や企業のトップには一握りしかなり得ない状況が続いてるという、かなり現実的なメッセージ。
ラストもグロリアが出世するみたいな安易で荒唐無稽なオチにはなっていなかったし、バービーの選択も単なるジョーク以上の意味を持っていてとても良かった。バービーは現実世界との関わりを通して家族(特に母娘)こそがバービーランドにない本当の社会だと気付いたんだと思うし、ラストはバービーにとっての社会進出と呼べるとても良い選択だったと思う。
「親子で思い出を共有する」ことがおもちゃのもつ意義だと自分でも思うし、それを考えると「トイ・ストーリー」や本作が親子関係にフォーカスしていくのも必然なのかなとも思う。

本作に関するアトロクのインタビューで、グレタ・ガーウィグが「誰かが決めた枠組からはみ出して制約から外れることで分かる人生の本当の意味や美しさがある、映画作家としてそういうことを語っていきたい」と言っていた。「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」とも同様、本作でも前代未聞の冒険をするバービーを通してチャレンジの素晴らしさを伝える意図は感じたし、着地は家族の尊さだけどそれだけじゃなくてバランス感がすごい…と思った。

男のキモさ、有害さが描かれるシーンも自分の心当たり含め印象に残ってて、最初が映画通(「ゴッド・ファーザー」)というのも憎い演出…笑
CEOはもっと愚かな人間として描かれるのかと思ったけど、周りの人間を団結させ動かすだけの力があるし、自分の意に反していてもグロリアのアイデアが正しいと分かれば受け入れる柔軟さを持っているし、やっていることが滑稽に見えるだけでリーダーの資質は備わってる人だったように思えた。

本作のライアン・ゴズリングもめちゃ良かった。まっすぐな人間(「ドライヴ」「ラ・ラ・ランド」「ブレードランナー 2049」「ファースト・マン」…)も、擦れた人間(「ラブ・アゲイン」「ナイスガイズ!」「マネー・ショート」…)も、どっちも行き来できるところが好きなので、本作はどっちの要素もあって楽しめた。現実世界帰りの痛すぎるケンも笑った("Mojo Dojo Casa House"、"Kendom")。ライアン・ゴズリングとシム・リウの可愛すぎる戦争も良い。