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バービーのmizuumiのレビュー・感想・評価

バービー(2023年製作の映画)
4.1
グレタ・ガーウィグ(&ノア・バームバック)の新作が「バービー」と知った時は驚いた。とても楽しみにしていたけど、日本では公開前にケチがついてしまって残念。
アメリカではワーナーブラザース史上最大のヒットになっているとのこと。この映画がそこまでのメガヒットになるって、希望がある話だと思う。

バービーランドでのケンはバービーの添え物で、バービーに振り向いてもらえないと自分には価値がないと感じている。女性たちが主役の世界で、誇れる仕事もなく、何者でもなくて、いつも軽んじられている。このミラーリング、ジェンダーギャップに完全無自覚な世代の日本人男性が見たらどう感じるのかな。
男の支配はうまくいってないのか?というケンの問いに対して、現実世界の男性が「いや、今はうまく支配していることをうまく隠している」と答えるセリフがすごく現実的だと感じた。

序盤のバス停のシーンでまず涙がこぼれてしまった。マーゴット・ロビーの演技がすばらしい。そしてコメディのライアン・ゴズリングはやっぱりおもしろい。過剰なマッチョを体現する姿を見て「ラブ・アゲイン」を思い出した。

女性に求められることが無理すぎる(アメリカ・フェレーラの長台詞の説得力!)。リーダーとして社会を担うのはしんどい。思考停止して洗脳された方が楽。男らしさ、女らしさから逃れてそのままの自分を見つめる。生きることは変わっていくことで死にゆくこと。振り返った時にそれでいいんだよと言うために原点にいるのが母…。
いろんな問いが何層にも織り込まれていてキャラも渋滞気味だけど、映像や音楽がキャッチーで笑えるシーンも多くてエンタメとして楽しめる。決して男vs女ではない描き方をしていたのが、さすがグレタ&ノアだと思う。

エンディング、映画館の音響で聴くBillie Eilishの空気を含んだ歌声とピアノが美しい。歌詞もこの映画の核心を表しているから、字幕があったらよかったのに。

字幕翻訳は野口尊子さん。ツルペタは、なぜその訳にしたの?!とびっくり。たしか直後に「生殖器がない」と出していたし、原語はめちゃめちゃ直接的な表現(I don’t have a vagina.)をバービー(マーゴット)がはっきり言うこと自体が笑えるシーンだから、直訳の方がよかったのでは。もちろんそれも選択肢にあがった上での選択だろうけど…。
メンヘラ、映える(ばえる)など、他にも気になる訳がいくつかあった。

追記。
隣の席の若い男性が背もたれから背中を離して前屈みになったり(それやると後ろの席の人の視界に思いっきり頭の影が入る!)途中からずっと携帯いじってて光が目に入ってすごく迷惑だった…。そういう人は映画館に来ないで配信待って家で映画観てほしい。彼はこの映画から何か受け取ったのかしら。
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