かすとり体力

バービーのかすとり体力のレビュー・感想・評価

バービー(2023年製作の映画)
3.7
『レディ・バード』『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』ともに最高だったグレタ・ガーウィグ監督作品。

当初本作を知ったときは「また何か変なイロモノ映画出て来たなー」くらいに思っていたが、監督がグレタ・ガーウィグと知り俄然興味を惹かれだしたもの。

観てみてびっくり。その初見の印象と反して、なんたる社会派な作品だこと。
『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』なんかはジェンダー文脈で読み解ける要素が強い作品ではあったけれど、本作はそこをメインテーマに据えてきていて驚いた。

あと、「バービー」の世界を舞台にするという前提条件と、ジェンダーという社会派なテーマを掛け合わせて、きっちりと一本の風刺・コメディー映画として仕立て上げるのってめっちゃくちゃ難しい所業だと思うんだけれど、これを100点でやってるのってやっぱ凄いと思う。これぞまさに「力量」。

私のテンションとしては、純粋な個人の嗜好として、もともとファンタジー要素が強い作品があまり琴線に触れないのと、社会派テーマの押し出しが強すぎる(というか話の主軸がそれ)という受け止めでもあり、大絶賛!!というノリではないんだけれど、客観的に評価した場合傑作と言って良い作品なのではないかと思う。

ジェンダーの取扱いについても、作品中盤までは「グレタ・ガーウィグのこと、このままジェンダー間の分断を煽るような展開を続けないようね・・・?」と懸念しながら観ていたんだけど、ちゃんとそういった分断を無効化するように物語が進展していき一安心。

最近よく言われる、平等(イクオリティ)から公平(エクイティ)へ、そして更にはジェンダーという視点を尽き抜けて「個」としてのアイデンティティという視座へ、という流れにしっかり歩調を合わせて来ていて、本当に優等生というか、かしこっ!と思いましたです。
(ただその「個」としてのアイデンティティの確立って、特に日本人が非常に苦手とするところでものすごい高いレベルの要求をされている感じもあるけど・・・)

ということで、同監督が、ステージを一段階上ったことを圧倒的なパワーで示すような作品だと思う。
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